研究課題/領域番号 |
19K04599
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小泉 圭吾 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10362667)
|
研究分担者 |
小松 満 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (50325081)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 表層崩壊 / 体積含水率 / 健全度診断 / モニタリング / 集中豪雨 / 土壌水分計 / のり面 / 斜面 |
研究実績の概要 |
近年の異常気象によって表層崩壊による被害が多発し,その対策が急務となっている。一方,現行の警戒基準は自治体,インフラ事業者ともに雨の情報のみを基に設定しているため,予め個々の斜面の危険性を判定できる基準ではない。つまり現行基準は崩壊が発生することを許容した基準であり,崩壊の危険性を未然に診断し,予め対策を行う予防保全の考え方(Society5.0)ではない。その理由は,現時点で表層崩壊の危険性を未然に診断できる手法が確立されていないことと,モニタリングには費用が掛かるという固定観念があるためだと考えられる。そこで申請者らは考案中の土中水分で斜面の健全度を診断する指標(IQS)により,一定期間のモニタリングから斜面の健全性を評価し,監視を継続すべきか,そうでないかの判定が行える観測手法を開発することとした。 初年度では,計測地点ごとに得られる観測データからIQS指数を求める手法を考案した。ここでの問題点として,観測期間中にIQSを超えるようなデータが収集できた場合は,その情報を基に斜面の健全性を評価することが可能となるが,そうでない地点における評価手法をどうするかが課題となった。そこで今年度は,IQSを超えない期間においても,IQS指数に着目した斜面の健全性評価が可能になる手法について検討を行った。また初年度の成果として述べた,一部の観測データから確認された,降雨強度が変化してもIQSが変化しない現象は間隙空気圧の影響であるという仮説に対して,実際の間隙空気圧を測定した実験からその可能性を検証した。これに加え,表層崩壊の主要因が浅層における地下水位の上昇による点に着目し,深度方向の体積含水率の変化から,浅層での地下水位発生の可否を推定することで健全性を評価する手法を考案した。更に,課題であった棒状センサに代わる安価で入手が簡単な単管を用いた新たな計測手法について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に挙げた課題に対し,上述の通り複数の視点からその解決案を検討および提案することができた。最終年度はこれらの手法を使った斜面の健全度評価手法の検討と,当手法の実用化を目指して開発した計測機器の性能評価を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は初年度の課題の解決案を検討すると共に,最終年度である次年度に向けた準備を行った。まず,現地の地盤情報を反映した不攪乱試料を基に,IQS指数を推定する手法を提案した。次年度は当手法を用いて,現在計測を行っている各斜面のIQS指数の変化をモニタリングする。併せて今年度提案した,深度方向の体積含水率の変化から,浅層に地下水位が発生するかしないかを推定する手法を,現在計測を行っている各斜面に適用する。これら二つの手法を組合せることにより,一定期間のモニタリングから豪雨時の斜面の健全性を評価する手法を提案する。 当手法を実用化するために,当初深度方向の体積含水率を多深度で計測できる棒状タイプのセンサを現地に設置することを考えていたが,掘削孔とセンサとの設置具合によって値にばらつきがでることが確認された。元々,深度方向の浸透挙動を精緻に捉えることを目的に検討したものであるが,センサ自体のコストや設置方法に課題があることがわかった。そこで視点を変えて,申請者らが提案しているIQSを,安価に,かつ簡便に計測できる手法の方が実用面において優位であると判断し,単管を用いた水分,水位計を開発した。今年度はこれらの性能評価を行うことで,実用化に向けた可能性を探る予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
棒状センサの代替案として開発した単管を用いた水分,水位計のプロトタイプは,共同研究者が有する資材や既存の設備を利用して実施することが出来た。これによって,今年度予定していた実験は最小限のコストで完了することができたため,今年度準備していた予算は次年度,代表者の研究施設で実施する当該実験のための一部として繰り越すこととした。
|