研究課題/領域番号 |
19K04604
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
仙頭 紀明 日本大学, 工学部, 教授 (40333835)
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研究分担者 |
海野 寿康 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (50570412)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 液状化 / 遅れ破壊 / 非液状化層 / 遠心載荷実験 / 過剰間隙水圧 |
研究実績の概要 |
本研究は大地震により液状化した地盤が、時間遅れを伴いながら水平移動や沈下といった地盤変位が発生するメカニズムを明らかすることを目的とする。加えて、これまで実験では困難であったこの時間遅れ破壊現象の再現を模型振動実験により試みようとするものである。研究の着眼点として、飽和した緩い砂層の上部にある非液状化層によって、砂層で上昇した過剰間隙水圧による被圧状態が長時間保持されて、この間に遅れ破壊が発生するものと考えた。したがって、表層にある非液状化層の遮水性や厚さが遅れ破壊に影響しているものと考え、まず今年度は、室内カラム実験を実施して、液状化層内の過剰間隙水圧分布を把握することとした。 室内カラム実験では、通常アクリルパイプ等に緩い砂を充填し、飽和させた後に振動を加えて液状化させるが、パイプ自体は土に比べて剛性が高く、土のせん断変形が抑制されて十分な液状化を発生させることが難しいという問題があった。そこで、せん断変形に追従できるフレキシブルパイプを用いた可撓式コラム装置を作製して実験を実施することとした。 この装置には塩化ビニール製のフレキシブルパイプ(内径20.3cm、高さ100cm)を用いた。パイプ内に砂層(東北珪砂6号)を厚さ60cmで充填し、その4深度に間隙水圧計を設置した。砂層の上には非液状化として、遮水性と可塑性を有する大石田粘土を厚さ15cm敷き詰めて作製した。砂層を飽和させた後に、両振幅20cmの十分に大きなせん断変位を繰返し与えてた。 実験により得られた砂層の過剰間隙水圧は、十分にせん断したにも関わらず液状化時の値と比べて低く、砂層は液状化しなかった。この原因は、フレキシブルパイプ自体の剛性不足により、水圧でパイプ自体が体積変化したと考えられた。そのため、変形追随性を保ちつつ、体積変化が少ない構造への改良が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、台風19号の洪水による影響で、研究室ならびに実験室が被災した。そのため、実験室、研究室及び水没した実験装置の復旧に時間を要した結果、10月中旬から1月初旬までの約3か月間は実験を行うことができなかった。 研究環境が復旧してから、まず予備実験を実施した。その結果、水圧によるパイプ自体の体積変化が原因で、過剰間隙水圧の上昇が抑制されて、砂層は液状化しないことが判明した。そのため、剛性が低いパイプの可撓部分に対して、はらみを防止するために、金属製ワイヤー(直径3mm)を二重に巻き付けて補強する対策を施して実験を行った。しかしながら、完全にはらみを防止するには至らず、液状化は発生しなかった。 今後は可撓カラム自体の構造をさらに見直して、水圧による体積変化が無視できる程小さく、かつ、パイプのせん断変形が確保できる構造を有する装置に改良することとし、現在、装置の試作に取り組んでいる。具体的には、十分な剛性を有する塩化ビニール製のパイプを輪切りにして、多段に積み重ねて、その境目の部分では水平移動のみを許しながら、かつ、止水を施すように改良中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、まず、改良を施した可撓コラム実験装置を用いて、前年度に実施した実験の再試験を実施する。この実験により、液状化層内の過剰間隙水圧分布を把握するとともに、非液状化層に働く土圧や地表面沈下量を測定することで、2つの層の間の相互作用を明らかにして、次に行う模型振動実験の実験計画に反映させる。 さらに、五洋建設技術研究所が保有する遠心載荷装置を利用して、緩傾斜地盤モデルの振動実験を実施して、時間遅れを伴う地盤変位の再現を試みる。地盤モデルは、表層に粘土の非液状化層を設け、砂層は相対密度40%程度の緩い状態で作製する。剛な土槽側壁によって地盤変形が拘束されると、遅れ破壊が再現できない恐れがあるため、側方の境界条件の影響を最小限にとどめる、非液状化層の厚さを斜面下方に向かって薄くするといった工夫を施す。この効果を事前に把握するため、粘土の層厚、ヤング率、液状化層のヤング率、地表面の傾斜角等を変化させた有限要素法によるパラメータスタディーを実施して、最適な地盤モデルを決定する。それに先立ち、室内要素実験により粘土の水分量を変化させた条件でヤング率を求める。室内実験は共同研究者の海野寿康が実施する。 なお、現在、コロナウイルス感染拡大防止のため、緊急事態宣言が発令されており、研究活動が実質停止しており、今後の実験実施スケジュールに影響がでる可能性があるため、実験の委託先とも連絡を取り、状況に応じて計画を適宜見直しながら進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者と2月中に研究打合せを1回実施することにしていたが、コロナウイルス感染拡大の影響により、不要不急の出張を控えるよう大学から指示があったため、出張を取りやめることとした。研究費の残額は、令和2年度に実施する模型振動実験にかかる費用に充てることにした。
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