今年度は、非液状化層を疑似的にモデル化するために、地表面付近に透水性の低い難透水層を設けて、難透水層の直下の砂地盤で被圧状態が保持できる条件とした。さらに豊田らが提案した緩い砂の応力ひずみ関係の相似則を適用した。 実験は重力場模型振動実験とした。地盤モデルは、剛土槽(600×495×200mm)内に傾斜角14°の斜面を作製した。地盤材料には珪砂6号を用い、含水比を2%に調整し、湿潤締固め法により相対密度-20%の超緩詰め地盤を作製した。ケース1は難透水層無し、ケース2、3は難透水層有りとし、難透水層は地表面下50mmに敷設した。ここで、難透水層には厚さ0.015mmのビニールシートを使用し、通水により飽和させるために直径2mmの穴を30個設けた。また地盤内に超小型低容量の間隙水圧計を設置した。加振波は正弦波2Hz、最大加速度100galとし、波数はケース1、2で4波、ケース3で2波入力した。 目視による地盤変位の観察結果より、ケース3についてのみ、振動終了後約4秒間に遅れ破壊が確認できた。なお、ケース1と2の比較より、難透水層が存在することでより大きな流動変形が発生した。ケース2で遅れ破壊が発生しなかった原因は、振動終了直後に地表面がほぼ水平になったためである。一方、ケース3では少ない波数により、振動終了後も斜面の傾斜が保たれていたため、振動後にも流動変形を引き起こす駆動力が残存していた。 地盤内の過剰間隙水圧分布より、難透水層直下付近において初期有効上載圧を超えるような高い被圧状態が確認され、この圧力が維持されている間に時間遅れを伴った流動変形が生じていたことが確認できた。 以上より、液状化による時間遅れ破壊を再現するには、難透水層の存在によって地盤内に高い被圧状態が保たれ、かつ、地盤傾斜といった駆動力が残存していることが必要であることがわかった。
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