研究課題/領域番号 |
19K04607
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山添 誠隆 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60760238)
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研究分担者 |
西村 聡 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70470127)
荻野 俊寛 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (80312693)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 泥炭 / プレロード工法 / 長期沈下 |
研究実績の概要 |
関東以北には超軟弱土の泥炭地盤が広範囲に分布する。この地盤上の構造物を建設すると、非常に大きな一次圧密が発生する。また、過剰間隙水圧消散後も長期に渡り二次圧密による沈下が継続的に生じる。プレロード工法は供用後の沈下軽減のために採用される最もポピュラーな工法である。近年、安定補強の新工法との併用で、さらなる効果の発揮が期待されている。一方で、荷重撤去後の再沈下挙動の予測は、経験的な手法によっているのが現状で、従前とは異なる荷重規模・施工履歴に対する適用性は不明である。本研究の目的は、構造物建設から荷重撤去後の再沈下までを一貫して定量的に記述できる汎用解析ツールの開発であり、理論に基づき設計仕様の最適化・高度化を試みることである。この目的の達成に向けて行った初年度の研究実績は次のとおりである。 ・メカニカルな荷重除荷を受けた泥炭の沈下挙動をモデル化するためには、その根拠となる実験データが不可欠である。初年度は研究計画のとおり、北海道内のサイトから試験に供する不攪乱試料の採取を行った。 ・採取した1箇所の泥炭に対して、過圧密比OCRを変化(OCR=1.1, 1.3, 1.5, 2.0)させた系統的な長期圧密試験を実施した。その結果、荷重除荷後、泥炭試料はリバウンド(膨張)し、その後膨張も沈下もしない平衡状態が続いたのち、再び沈下に転じることを確認した。OCRが大きいほど、再沈下までの時間は増加し、また再沈下量も小さくなることがわかった。 ・圧密中にひずみ速度を変化させる変速CRS試験を実施し、ひずみ速度に依存して圧密曲線が平行にシフトするアイソタック挙動を確認した。その上で、荷重撤去後の沈下挙動についても同則で解釈できるかを検討した。更なるデータの蓄積は必要であるが、その適用可能性について明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの泥炭研究の知見をもとに本研究の実験計画は立てられており、サンプリングに関しては円滑に実施することができた。一方、3連式の圧密試験機を用いて行っている(除荷を伴う)長期圧密試験については、利便性および試験効率の向上のため、研究分担者の協力を得て個々の圧密容器で独立な試験機システムを構築した。この製作および環境準備にやや時間を要し、当初の予定から実験の開始が遅れたため、進捗状況としては上記区分にあると判断した。ただし、このシステムの整備により、各圧密容器で独立した試験の実施が可能となったため、研究期間全体で見た場合には、この遅れは問題なく取り戻すことができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的の実現のため、次年度についても研究計画に沿って、引き続き除荷を伴う系統的な長期圧密試験を実施する。用いる試料は、今年度用いた泥炭とは性状が大きく異なる北海道内の他サイトの泥炭を予定しており、そのサンプリングも行う。除荷を伴う長期圧密試験における変数は、過圧密比OCRの大きさ、並びにプレロード期間である。当該試験は1回の実施にかなりの時間を要するため、バラツキの大きい泥炭では、荷重除荷後の測定期間を短縮させ、その分多数の試験を実施した方がデータの信頼性や再現性の確認の観点から有益である可能性がある。限られた研究期間内で研究を推進していくために、試料の状態や実験によって得られたデータを随時チェック・評価し、より効果的・効率的な実験方法の検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況で述べたように、より利便性の高い試験システム構築のため、データロガーを含めた試験システムを自作した。これに伴い、データロガーに係る購入費用などを削減できた。次年度の使用計画については、実験に必要な消耗品の購入や情報・意見交換のための出張費など、研究目的の遂行のために積極的に活用する。
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