本研究は,今後も大量発生が見込まれる石炭灰を利用して現地発生土の物理的な改質を図り,これに固化材(消石灰)を組み合わせてどの程度の安定処理効果が見込めるのかを把握することを目的とする.そのために先ず,土に異なる混合率で石炭灰を混ぜ合わせた土試料(石炭灰混合土)に対して各種物理試験を行った.次に,石炭灰混合土に消石灰を加えて所定の期間湿潤養生させた後,一軸圧縮試験を行った.これらの結果から,石炭灰混合が土の物理的性質(粒度,コンシステンシー,締固め特性)ならびに強度発現にどのような影響を及ぼすのかを検証した. 本研究で得られた知見をまとめると,(1)元々粗粒土に分類されている「分級された砂」と「細粒分混じり砂」に大部分を細粒分が占める石炭灰(FA)を混ぜ合わせることによって,FA混合土全体の細粒分の割合が高くなる.(2)「砂混じり粘土」についてコンシステンシーを調べた結果,FA自体が非塑性(NP)であることから,粘土の塑性指数IPはFA混合率の増加に伴って低下する.(3)「分級された砂」はFA混合率の増加に伴って著しい締固め効果が得られる.「細粒分混じり砂」も,「分級された砂」ほどではないが,FA混合によって一定の締固め効果が得られる.「砂混じり粘土」については,FA混合に伴う締固め効果はほとんどない.(4)FA混合は消石灰未混入の場合においても,一定の強度増加が期待できる.さらに消石灰を組み合わせることで著しい強度発現効果が得られる.しかしながら,養生7日と28日の間には,養生日数の経過に伴う明瞭な強度の差が見られない.供試体内部にはFAが形状を変えることなく数多く存在していることから,長期養生における強度発現効果は期待できないと思われる.
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