研究課題/領域番号 |
19K04611
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
八木澤 順治 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70549998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 堤防越流侵食 / ガリー侵食 / 天端凹凸波長 |
研究実績の概要 |
本研究は,堤防越流初期に生じるガリー侵食の特性を,越流水深,堤防天端の縦断的な凹凸の周期性,堤体材料特性,裏法勾配と関連付けることで,早期に破堤に繋がるリスクの高い箇所を明らかにすることを目的としている. 研究初年度である令和元年度は,研究実施計画に基づき,実験室スケールでの堤防越流侵食実験を精力的に実施した.実験では種々あるパラメータのうち,先行研究で不足していた天端凹凸の波長(6ケース),越流水深(2ケース)に着目し,計12ケースの実験を実施した. また,研究実施計画には記載されていないものの,令和元年度東日本台風時には,荒川支川群においても多くの地点で堤体越流侵食が確認されたため,ガリー侵食に関する現地調査を実施した.本研究で目的とする天端凹凸特性・越流特性に応じたガリー侵食特性に関する重要な現地データが得られ,室内模型実験結果との類似性に関する比較を実施した. 室内模型実験からは,無次元ガリー侵食深(ガリー侵食深さ(Sd)/堤防高(EH))について,同じ無次元越流水深(越流水深(h)/EH)の条件下において,無次元波長(天端凹凸波長(λ)/EH)の変化に対して上に凸の傾向がみられ,λ/EHが1.6程度でSd/EHが最大となることが分かった.一方,無次元ガリー間隔((隣り合うガリー同士の間隔(l)/λ)は,λ/EHの変化に対して,下に凸の傾向がみられ,λ/EHが1.6程度でl/λが最小となることが分かった.これらのことから,越流規模が同程度でも,裏法面での侵食傾向が強まる(侵食量が大きく,ガリー同士の間隔も狭い)天端凹凸波長が存在することが明らかとなった.また,上記台風後の現地調査結果と実験結果を比較したところ,λ/EHが1.6-3.3の範囲については,概ね実験と同様の傾向となることを確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画において,初年度には天端凹凸特性である波長に焦点をあて,現地の実堤防に対しても幅広く適用可能な範囲に拡充することを目的としていた.この点については,実験実施が十分なされており順調である.さらに,当初想定外であった令和元年度東日本台風による堤防被災事例が数多く確認されたことから,上記の室内模型実験と現地堤防の実スケールで生じるガリー侵食特性との類似性・相違性を比較することが可能となった.この点では,当初計画以上に有用な知見が得られたと考えている. 一方で,上記の堤防被災調査に多くの時間を要したため,当初研究実施計画において予定していた数値解析に関する初期検討にやや遅れが生じている.しかしながら,すでに実験室スケールでの越流侵食解析の骨格は出来上がりつつあるため,次年度(2年目)に加速し,当初実施計画に記載の通り,解析モデルから破堤リスクを高めるガリー侵食を引き起こす越流水深・天端凹凸条件を抽出することは十分可能である. 上記の理由から,研究実施計画に対して概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を推進していくにあたり, 初年度の実験では天端凹凸の波長,越流水深に的を絞ってガリー侵食特性の把握を実施した.しかし,堤体材料は場所によって大きく異なる.そのため,特に侵食現象に大きな影響を与えることが予想される粘土・シルト含有率を変化させた実験を実施することで適用範囲を拡大させる. 一方,もう一つの大きな柱である,堤防越流侵食の数値解析モデルの開発については,初年度の検討で,実験室スケールでの越流侵食解析の骨格は出来上がりつつある.上記の実験は労力が大きいため,現象を左右する重要パラメータを幅広くカバーすることは容易ではない.そこで,凹凸波長・振幅,越流水深をはじめとしたガリー侵食に影響を及ぼすパラメータのより広範囲にわたった検討は,室内実験によって検証されたモデルを有効活用することを想定している.2つの検討(室内実験,数値解析)から,2年目の目的である,破堤リスクを高めるガリー侵食を引き起こす越流水深・天端凹凸条件を抽出を効率的に推進する.
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