研究実績の概要 |
従来から用いられてきたDAD解析やIDFカーヴと類似の手法ではあるが,IDFAカーヴをあらかじめ用意し,ある確率規模(F),面積(A),降水継続時間(D)の降水強度(I)を求める手法は,河川計画策定に非常に有益である.DAD, IDFにおいては,昔から一つの数式が示されることが多かった.もちろん現象理解のためには,一つの数式を示すことは有益である.しかし,例えば行政が計画策定のためにこの考え方・資料用いる場合,数式を用意するより,データベースを作っておいて,「F, A, D を入力したらすぐにIが得られる」という状態にしておく方が有益である.今回はそのようなデータベースをd4PDFの現在気候データ(3,000年分)を用いて作成した.ひとつわかったことは,そのようなデータベース作成のためには,非常に大きな計算資源が必要だということである.研究期間を1年延長したのは,IDFA関係をデータベースとして提供しつつも,目に見える形にする方が親切であるという考え方で,その手法を検討したからである.結果として,例えば「あるF, D, A」を入力した場合には,Iの数字を示すが,(例えば)「F,A」を入力した場合にはグラフィックソフトでDとIの関係を示すような簡単なプログラムを使用することとした. この研究では,IDFAカーブを策定する際に,大量のd4PDFデータを用いることを考えたが,データが少ない場合は,従来のような,パラメトリックな手法で降水量の確率規模を評価せざるを得ない.その際に,確率モデルの母数の同定手法や最適な確率モデル算定のための手法が必要になる.それらの検討も行った結果,従来から本邦で良く用いられてきた手法に不都合な個所が種々あることが判明した.また,それらの改良案も示した.端的に言うなら,最尤法で母数を推定し,AICを用いてモデルの評価を行うのが一番良いという結果を得た.
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