研究課題/領域番号 |
19K04614
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市川 温 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30293963)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 土壌特性 / スケール構造 / マイクロスケール / メソスケール / 流量流積関係式 / 雨水流動モデル |
研究実績の概要 |
土壌の不均質性は山地斜面の雨水流動に大きな影響を与えているが、このような土壌の不均質性の効果を織り込みつつ河川流域全体に適用可能な物理的降雨流出モデルはいまだ開発されていない。 土壌に不均質に存在する様々な大きさの空隙に伴う微細なスケールでの水理特性(マイクロスケール水理特性)と、それらが集約された結果出現する、土壌中の水量と流量の関係といった、やや大きなスケールでの水理特性(メソスケール水理特性)の間の構造を明らかにできれば、河川流域に適用可能な降雨流出モデルに土壌の不均質性の効果を織り込む糸口になると期待される。 本研究では、土壌の不均質性を考慮して山地斜面の雨水流動を計算する詳細なモデルを開発し、その計算結果から、上記の二つの水理特性間の構造を分析することを目的としている。 当該年度は、土壌の不均質性を考慮して山地斜面の雨水流動を計算する詳細なモデルに異なる条件を与えてシミュレーションを行い、その計算結果から得られる流量流積関係と表土層中の土壌水分プロファイルの関係について分析した。 その結果、まず、雨が降り出した直後は鉛直方向の浸透流が卓越して斜面方向の流れは小さいが、浸透流が表土層底面まで到達すると飽和帯を形成し流量が急激に増えていく、という過程が流量流積関係に二価の関係(ループ)を生みだすということが明らかとなった。また、このように流量流積関係が二価になるような状況では、キネマティックウェーブモデルの適用性が低くなることも明らかとなった。さらに、表土層厚が小さい場合は流量流積関係が一価の関係に近づくこと、表土層が大きい場合には同じ土壌水分量であっても流量増加時と低減時で斜面方向の流量が大きく異なることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に開発した山地斜面の詳細な雨水流動モデルを用いて、斜面の勾配や表土層の厚さが表土層中の雨水流動に与える影響を分析し、土壌水分の鉛直プロファイルの違いが斜面方向の流動プロセスに大きな影響を与えていることを見出すことができた。この知見は、キネマティックウェーブモデルにような現在の分布型降雨流出モデルの不確実性の解明と、降雨流出モデルの改良につながるものであり、重要な成果であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
小空隙部の透水係数、大空隙部の空間密度・連続性といった土壌のマイクロスケール水理特性と、斜面全体の貯留量-流出量関係、計算断面の流量-流積関係、計算断面の平均流速-動水勾配関係などのメソスケール水理特性との関係の分析を進める。また、鉛直方向の雨水流動が卓越するかそうでないかによって、同じ土壌水分量であっても、斜面方向の流動特性が大きく異なることがわかってきたので、この知見を活かして、キネマティックウェーブモデルのような従来の分布型降雨流出モデルを改良する方策について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通りに使用し、最終的に1万円未満の残額となった。次年度分とあわせて使用した方が有効であると考え、次年度使用額が生じた。次年度分として請求した助成金(40万円)とあわせて、主に物品費として使用することを予定している。
|