研究課題/領域番号 |
19K04616
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研究機関 | 鹿島建設株式会社(技術研究所) |
研究代表者 |
野原 大督 鹿島建設株式会社(技術研究所), サスティナブルソサエティラボ, 主任研究員 (00452326)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダム操作 / 事前放流 / アンサンブル予測 / 水力発電 / 治水 / 多目的ダム |
研究実績の概要 |
多目的ダムを対象として、現業中期アンサンブル降水予報と予測特性を考慮した多目的ダムの事前放流実施手法の検討を行った。気象庁週間アンサンブル予報の降水量予報値を用い、大規模な洪水発生の可能性や貯水位回復可能性を踏まえながら事前放流を効果的に行う手法を開発した。このとき、各メンバの予測降水量の順位別に精度解析を行い、ダム管理者等が考える受容可能な治水・利水リスクのレベルと予測の誤差特性を踏まえて事前放流の実施方法を決定するアルゴリズムを開発した。近畿地方に位置するモデル多目的ダムの事前放流・洪水調節・長期利水操作シミュレーションにより有効性を検討した結果、予測の誤差特性を考慮することで、見逃し・空振りのリスクや期待される事前放流可能量を踏まえながら、管理者等が考える受容可能なリスクのレベルに応じて、事前放流へのアンサンブル降水予測の合理的な利用方法をある程度客観的に決定できることを明らかにした.また、中期アンサンブル予報のような空間解像度が粗い予報値を使ってもある程度の水準で事前放流の判断が行えることや、その場合に不要な事前放流の実施をどの程度受け入れる必要があるかといった情報を定量的に推定できることを示した。操作シミュレーションを通じては、長時間アンサンブル予測情報を考慮することにより、早い段階から事前放流が実施できることで、結果として大きな空き容量をダムに確保することができ、大規模出水時における洪水調節効果が向上する可能性を示した。また、事前放流の空振りが発生しても、最終的に貯水量の回復が困難となったり、利水補給面での支障が生じたりする事例は見られれなかったほか、アンサンブル予測の利用方法を提案手法により適切に決定することで、洪水調節効果を大きく損なうことなく不要な事前放流の実施回数を減らせることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究における理論開発やシミュレーション評価は概ね順調に進んでいるものの、感染症の世界的な流行により、参加を予定していた国際会議の開催が中止や延期となり、成果の発表や関連研究者との意見交換の機会が得られず、研究の進捗にやや遅れが生じているとともに、当初計画と比較して予算の執行が遅れている。また、世界的な半導体の不足に伴い、当初計画していた新規の計算機の入手が難しくなっており、既存の計算機を活用するなどして工夫は行っているものの、予算の執行と研究の進捗にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
延期されている国際会議が次年度に開催予定であり、これらの会議への参加を通じて研究成果の公表を進めるとともに、関連研究者との意見交換を進め、研究に反映させながら研究課題の推進を強化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の世界的な流行により、当初計画で参加を予定していた全ての国際会議の開催が中止・延期またはオンライン開催となり、参加登録料や海外旅費が不要となったことに加え、半導体の不足により当初予定していた計算機の購入が遅れているため。次年度にはこれらの国際会議の現地開催が予定されていることから、旅費において当初計画していた額の使用を見込んでいるほか、計算機の手配についても引き続き進める。
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