研究課題/領域番号 |
19K04619
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
辻本 久美子 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (80557702)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌水分量 / 衛星観測 / 誘電率 / 保水性 / 輝度温度 / マイクロ波リモートセンシング / 放射伝達モデル / 陸面データ同化 |
研究実績の概要 |
本課題では,リモートセンシングによって土壌水分量を広域推定する手法の改良を目指している.具体的には,人工衛星に搭載されたマイクロ波放射計による陸面輝度温度の観測データから,大気-植生-土壌の放射伝達モデルと陸面過程モデルを用いて,陸域表層の土壌水分量を推定する.この手法は,日本(JAXA),米国(NASA),欧州(ESA)などの宇宙機関等によって既に開発され,世界各地の土壌水分量モニタリングデータとして公開されているが,地域の農業や防災の現業に利用するためには,さらなる精度向上が必要である.本課題では,既に開発・実装されているアルゴリズム全体の一部を構成する,湿潤土壌の混合誘電率モデル(湿潤土壌の混合誘電率と土壌水分量体積含水率との関係)の改良に焦点を当てている. 今年度は,昨年度までに実施した室内実験のデータを用いて,これまで土壌物理学の分野で開発・検証されてきた複数のモデルに基づいた新たな誘電率モデルを構築・提案し,その検証を行った.ここで開発した誘電率モデルは,土壌の保水性を示す土壌水分特性と関連づけてモデル化していることが特徴である.それにより,湿潤土壌に対して,土壌中の水の流れを数値解析することと整合的に誘電率を評価することが可能となった. 土壌中の水分量は,降雨や蒸発散によって時々刻々と時間変化するものであるが,衛星観測のタイミングは1日2回などと限られている.本研究で誘電率と保水性とを関連づけたモデルを構築できたことによって,衛星観測日時の間を補間して,1時間ごとなどより細かい時間スケールで土壌中の水分量を数値計算することに対し,これまでのモデルに比べて精度よく評価できると期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究推進に対して,関連分野の複数の研究者らから多くのご助言やご支援をいただき,当初の予定よりも効率的に研究を進めることができ,当初の研究目的であった土壌の保水性と誘電率との関係に関するモデルの開発と検証を行い,学術論文として発表(印刷中)することができた.さらに,本研究で構築した新しいモデルを人工衛星による土壌水分観測アルゴリズムに実装し,全球土壌水分量推定値への影響を検討するなど,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
研究成果を複数の学術論文として投稿中・投稿準備中であり,引き続き成果の発信を進めていく.また,本研究で構築した新しいモデルの有効性を,より多様な土壌に対して確認するために,新たな実験を計画している.また,室内実験によって保水性と関連づけた誘電率モデルを構築・検証することが本研究の当初の計画であったが,当初の計画以上に課題の実施状況が進捗しているため,圃場スケールでの面的な実験を追加実施することにより,本課題で構築したモデルの社会実装に向けてさらなる検討を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせや国際会議での成果発表等が今年度はすべてオンラインでの実施となり,それらに予定していた旅費の使用が生じなかった.数値解析による検討は当初の想定以上に進捗していることから,成果の国際発信や追加実験の費用として翌年度に有効利用していきたい.
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