研究課題/領域番号 |
19K04622
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
天口 英雄 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (40326012)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市流域 / 洪水流出解析モデル / 浸水解析モデル / 雨水・下水道管路 / ポリゴン型土地利用 / 道路ネットワーク / 地理情報システム |
研究実績の概要 |
都市流域では、建物および道路などの不浸透域、公園および緑地などの浸透域が複雑に分布している。このような都市流域において洪水流出過程や水循環過程を精度よく解析するためには都、市を構成する建物,道路,公園などの地表面地物を正確に表現した土地利用データを作成し、これを入力データとする分布型洪水流出解析モデルや水循環モデルを構築する必要がある。 洪水流出解析モデルに用いられる河道断面データは、対象河川の横断測量図面から得られる断面特性が設定されている。都市河川の場合、横断形状は単断面であることが多く、河床幅と河床高を入手可能なデータから設定するこができれば,モデルの汎用性を高めることが可能となる。 また、河道要素周辺の地表面地盤高の設定手法は、基盤地図情報5mメッシュ標高DEM(以下,5mDEM)を細かな2mメッシュの標高DEM(以下,2mDEM)に内挿し、地表面の微小要素素内に含まれる2mDEMの平均値を設定していた。河川と隣接する地表面の地盤高は、河床高の影響を受けていることもあり、実際の地盤高より低く設定されることが課題であった。洪水流出・浸水解析の精度向上には,河道横断周辺の地盤高の再現性を向上させる必要がある。 そこで本研究では,都市流域における河道要素の横断データ設定に関する課題を示し、一般的に入手可能な5mメッシュ標高データから河道断面特性および河道に隣接する地表面要素の地盤高を設定する手法について検討を行い、その有用性について示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本システムを利用した都市流域への適用については、スウェーデンのマルメ市を対象に行った。本研究で対象としたAugustenborgは人口3470人,面積30haの団地が立ち並ぶ居住地であり、住居間には芝地が整備された緑豊かな地区である。本地域では、1990年代の大雨による駐車場および地下室の浸水被害や建物の老朽化などの問題を解決するために、市民と住宅会社が協力してこの地区の改修を行うEco-city Augusten-borgプロジェクトが発足し、下水道への排水量を減少させるために、合流式下水道により行われているこの地区からの雨水排水を、グリーンルーフ、複数の池と水路とを組み合わせた雨水流出抑制型の排水システムが計画され、1998年に施工が始まり2002年に完成している。グリーンインフラとしての機能を備えた水路には,景観向上のため自然素材や流速を減少させるための工夫がなされたものが設置されている。 本研究では都、市流域の複雑な排水システムを考慮するため、高度な地物データGISを用いてグリーンルーフ、水路、池などグリーンインフラとしての機能を備えた地区をモデル化し、その効果について定量的な評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
近年の計画規模を上回る豪雨イベントの発生は、治水施設が十分に整備されていないことも影響し、現状の治水施設能力を超過した水災害を全国各地にもたらしている。治水対策としては河川堤防、ダムおよび放水路などのハード対策に加え、洪水被害を軽減させるソフト対策として河川水位情報の提供や洪水ハザードマップの作成などが行われている。国、流域自治体および企業などが連携して進める流域治水プロジェクトでは、降雨量の増加に対応するために、雨水貯留浸透施設の整備、水田・ため池などを遊水地として活用するなどして河川流量を減らす対策が盛り込まれている。 一級河川流域を対象とした洪水流出解析モデルはグリッド型の解析格子が多用されており、個々の解析要素からの直接流出には土地利用情報、そして表面流出および河道網には地盤高情報が用いられている。流出解析モデルの実流域への適用ではグリッドの大きさにもよるが山間部と農村部を含めた河川、道路および水田の用排水路などを詳細にモデル化した事例はあまり見られない。農村流域には水田を主体とした用水・排水施設が整備されており、貯留施設の設置、水田あるいは溜池を遊水地として活用した場合の効果を算定するには施設規模に対応したモデル化手法が必要となる。建物,道路および農地などが複雑に分布した農村流域において,メッシュでこれらを忠実に表現することは困難である。 今後は、土地利用を忠実に再現することが可能である地物データGISを用いた都市洪水・浸水解析モデルを農村流域にも適用できるようにするため、農村流域特有の山林および農地などの取り扱いに加え,入手可能なGISデータから効率よくモデルデータを作成する技術について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦による影響により、現地調査および学会発表に関する支出が出来なかった。 次年度は現地調査を進める予定である。
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