研究課題/領域番号 |
19K04627
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
和田 清 都城工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (50191820)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境DNA / 魚道評価 / 縦断的な連続性 / GIS統合化 / 生息場の改善 |
研究実績の概要 |
本研究は、長良川・揖斐川流域の河川等を対象にして、水棲生物(魚類など)の生活史のボトルネックとなるダムや堰、落差工の影響などを、生物の縦断的な連続性の観点から、新たに魚道機能の評価、生息場の改善に繋げることが目的である。本研究は以下の三本柱により構成され、研究実績は以下のようである。 (1)流域基盤データと生物生息情報のGIS環境の統合化: 魚道を含めた縦断構造物の機能には、年々増加している洪水履歴に関連した河川の縦断的な連続性を統合GISにより、被災した長良川水系の吉田川及び津保川等について、魚道施設の修復状況等の時系列的な変化を可視化している。また、これらにより、洪水履歴と被災箇所、その被災に至る主要因(複数項目)等を抽出している。 (2)魚道及び周辺の微地形を考慮した魚類生息場の健全度評価: GISデータは、DEMと連動した3次元的な流域地形マップ(ArcGIS_Pro)であるため、魚道周辺の微地形を考慮した可視化や、洪水流を模擬した数値シミュレーションとの親和性が高い。数値計算には、土木学会の数値モデル(iRIC-Nays)を利用し、津保川の洪水氾濫解析、新境川や牧田川の流砂を考慮した洪水流解析を実施した。これらをもとに、洪水流の避難場所としての空間機能を抽出し、瀬と淵などの微地形のみならず河道線形との関係性を明らかにしている。健全度評価については、渇水・平水・洪水時に大別して評価を行っている。 (3)水域の落差と環境DNAメタバーコーディングによる生物情報: 水域の落差が生じる上下流間で、採水により魚類相を推定する環境DNAメタバーコーディングから、在来種・希少種・外来種などの生息域の分布を把握している。魚類採捕調査と連動させて、採水方法の工夫等により相関係数は0.8-0.9程度である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、現地調査や環境DNA分析、学会発表などの論文作成が予定通りに進まなかった。そのため、新たな調査箇所を設定することはせず、2019-2020年度と同じ対象河川(長良川水系)とその周辺の一部を増やすこととした。また、環境DNA分析は採水に依存するので、サンプリング方法(回数、時間、採水箇所等)を改善し、検水に含まれる有機物等の濃度を高めた結果、魚類調査との同定作業により環境DNAとの相関係数が高くなることが明らかにされた。過去3年間、調査を実施した対象河川には魚道などの横断工作物を含むため、上流域と下流域で魚類生息場等について差異が生じていることが魚類調査および環境DNAにおいても把握できた。 一方、横断構造物の落差などによる縦断的連続性の関係性や、河川のセグメントによる生息場等については、環境DNA分析による結果を十分反映することができない状態となっている。したがって、水棲生物の生活史を考慮した流域再生と魚道機能の持続性を考察するためには、これらに必要な検討項目を抽出して、具体的な到達目標を再整理する。 なお、研究代表者の異動により、対象河川の現地調査の頻度がかなり低くなるため、研究協力者等と情報共有を緊密に連携しながら、洪水履歴と魚道機能の持続性、魚類の生活史等を考慮した流域の再生を考察する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は以下の三本柱により構成され、今後の方策については以下のようである。なお、研究代表者の異動のため、対象河川の長良川・揖斐川流域を継続して、最終成果を取り纏めたい。 (1)流域基盤データと生物生息情報のGIS環境の統合化: 岐阜県管理の魚道673箇所の中から、近年の洪水等により魚道の機能不全が生じている長良川水系の吉田川及び津保川に加えて揖斐川流域を追加して、流況履歴などを含めた流域基盤データ情報(地形・水理特性)をGISデータにより、マクロ的な観点から縦断的な連続性を可視化して評価する。 (2)魚道および周辺の微地形を考慮した魚類生息場の健全度評価: 魚道機能を低下させる要因は、本体の破損のみならず河道からの土砂や流木の堆積、澪筋の変遷などが複合的に影響し、魚道プール内に堆積した土砂量により魚類遡上が阻害されることになる。魚道周辺の洪水後の澪筋変化や魚道本体との流水や土砂量の相互作用について、現地調査、構造物・水流・流砂を連成させた数値解析により因果関係を明確にし、土砂流入防止策(簡易床固め・水制など)の設計方法を提案する。 (3)水域の落差と環境DNAメタバーコーディングによる生物情報の分析: ダムや堰などの横断構造物により落差が生じる上下流間で、採水により魚類相を推定する環境DNAメタバーコーディングから在来種・外来種・貴重種などの生息域の分布を把握し、それらの生物種の在/不在情報から生物多様性の評価軸を考察するとともに、生物の生活史を考慮した魚道機能を評価する。さらに、各種の河川・護岸改修工事(水際環境の急激な改変など)の前後において、在来種、希少種、外来種等がどのように推移したかを分析して、河川工事による魚類相全体への影響の度合いについて改善策等を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、現地調査や環境DNA分析等が計画通り十分実施できなかったことにより、物品費等の残額が生じた。なお、研究代表者の異動により、対象河川の現地調査の頻度がかなり低くなるため、研究協力者等と情報共有を緊密に連携しながら、洪水履歴と魚道機能の持続性、魚類の生活史等を考慮した流域の再生を考察する予定である。
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