研究課題/領域番号 |
19K04628
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
神田 佳一 明石工業高等専門学校, 都市システム工学科, 教授 (60214722)
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研究分担者 |
渡部 守義 明石工業高等専門学校, 都市システム工学科, 教授 (00390477)
中村 文則 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (70707786)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 河川合流 / 河床変動 / 水制 / 模型実験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
兵庫県の加古川では,加古川大堰の建設とそれに伴う河道改修以降,その上流区間である左支川の美嚢川の合流部において,それまで左岸に形成されていた砂州が,右岸に移動して肥大化し,疎通能の低下等の課題が生じている.一般に合流部では,合流角の増大に伴って合流直下での剥離域の増大と堆砂が生じ砂州が形成されるが,合流部対岸に砂州が形成されるのはまれであり,河川管理上その形成メカニズムの解明が求められている.本研究では,加古川と美濃川合流部周辺の河川地形の変遷とその形成要因を明らかにすることを目的として,現地観測と堰の湛水及び上流河道の弯曲の影響を考慮した模型実験及び数値解析を行い,河川地形に影響を及ぼす合流部の流れ特性について考察するとともに,合流部における砂州の制御法としての水制工の水理機能とその効果について検証し,周辺河道条件を複合的に考慮した河川合流部地形の合理的な 維持管理技術の体系化を目指す. 本研究の学術的独自性は,加古川・美濃川合流部周辺の河川地形と洪水時・平水時の流況調査及び実地形を模した支川合流水路を用いて移動床実験を行い,合流部周辺の河川地形の変遷とその要因を明らかにするとともに,河川地形に影響を及ぼす合流部の流れ特性及び支配パラメータの抽出を行うことである.模型実験では,本川と支川の流量比,本川下流及び上流部の河道条件(堰による湛水と上流の河道弯曲の影響),河床材料等を変化させた従来の研究では見られない系統的な検討を行うとともに,合流部直上流の右岸側に水制工を設置した場合の洪水時の流れと砂州形状の変化について実験的に考察し,その水理機能と砂州抑制効果について検証する.さらに,合流部の流れを再現できる2次元及び3次元河床変動解析モデルを用いて,現地の流況及び実験結果の検証とその適用性の検討を 行うことに研究の創造性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,加古川と美濃川合流部周辺の河川地形とその要因を明らかにすることを目的として,現地観測と堰の湛水及び上流河道の弯曲の影響を考慮した支川合流水路を用いた模型実験を行い,河川地形に影響を及ぼす合流部の流れ特性について考察するとともに,砂州の制御法としての水制工の水理機能とその効果について模型実験及び数値解析手法を用いて検証し,実河川への適用性の検討を行った.2020年度の研究成果を以下に示す. (1) 加古川大堰建設後の水文諸量,河川横断測量,河床材料資料等を収集・整理するとともに,加古川・美濃川合流域において現地の河川測量を行い,模型実験で得られた河床形状との比較からその検証を行った. (2) 前年度に引き続き,模型実験水路を用いて合流部地形を再現し,移動床実験を行った.下流部の堰による湛水を考慮すると,水位の上昇とともに,混合域での河床低下は減少する一方,その上流側の堆積域は拡大する.水路上流端左岸に板を設置した場合には,混合域上流の水路中心線に沿って上流からの流砂が堆積し,合流部水路中央から対岸域において現地で見られた舌状の砂州地形が発達することから,その形成要因として,本川上流部の河道形状による影響が最も支配的であると考えられる.また,堰湛水による下流水位の大きい程,砂州の形成領域は拡大する.合流部直上流に現地と同様の不透過水制を設置した場合,その水刎ね効果によって,合流部中央から右岸にかけての砂州はフラッシュされ,砂州の制御効果が認められる一方、その背後に新たな砂州の形成が認められた. (3)平面2次元の河床変動解析の結果は,流れの3次元性が卓越する水制周辺部の河床変動を除いて実験結果と概ね良好に一致しており,その有用性が示された.今後,水制周辺の局所な流れと砂の挙動を明らかにする必要がある. 以上のことから,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究を継続して行うともに,以下の研究を行う. (1)合流部における砂州の肥大化を抑制するための方策として,合流部直上流の右岸側に水制工を設置した場合の模型実験を行い,洪水時の 流れと砂州形状の変化について考察し,その水理機能と砂州抑制効果について検証する.水制模型は,厚さ5mmのアクリル板を重ねた台形状の もの(長さ0.2m,幅0.06m,高さ0.025m)を基本形状とし,合流点直上流左岸(X=2.35m)に流下方向に対して直角に配置する.さらに,水制の様式(透過・不透過)や形状を変化させた場合,特に木杭列を用いた透過型水制について検討を行い,その効果を検証するとともに,水制の様式や形状が合流部の河床形状に及ぼす影響について総合的に考察する. (2)2次元浅水流解析モデルを用いて移動床実験の再現計算を行い,その有用性を検討するとともに,地形形成の支配的要因と考えられる大堰による湛水や支川合流等の個別の影響について感度分析を行う.また,2次流の卓越する水制近傍については,公開汎用解析ツール(iRIC)の3次元解析ソルバーを用いて解析を行い,水制近傍の詳細な河床形状の予測と実験結果との比較から,実河川への適用性を評価する. (3)以上の結果を総合し,加古川と美濃川合流部周辺の河川地形の変遷とその形成要因を明らかにするとともに,周辺河道条件を複合的に考慮した河川合流部地形の合理的な維持管理技術の体系化を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:2020度では,河川合流部の動態に関する模型実験の補助及びデータ整理に研究協力者の雇用費を計上していたが,経費節減のため予定よりも実験条件の範囲を小さく設定し,実験の項目を調整した.このため,実験用資材等の経費が減少するとともに,研究代表者及び分担者のみでこれらの模型試験を行うことができたので人件費がゼロとなった.また,発表を予定していた国内及び海外での学会がオンライン開催となったため,旅費の支出がなくなり,次年度の使用額が生じた. 使用計画:次年度使用額は,2021度計画で引き続き行う予定の河川合流部の動態に関する模型実験に必要な実験資材の購入や実験補助のための雇用費として使用する予定である.
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