研究課題/領域番号 |
19K04629
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
篠原 隆一郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (00610817)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化還元電位 / 底泥 |
研究実績の概要 |
本年は初年度であるため、最初に過去のデータから底泥フラックスと底泥酸化還元電位との関係を明らかにした。主な解析結果は以下の通りである。成果1として、底泥からのメタンフラックスがどのようなメカニズムで行われているかを最初に明らかにした。底泥からのリンのフラックスは夏季に多いことが明らかになっているが、その一方で、底泥中における酸化還元電位は底泥溶出に影響を与える厚さにおいては常に100mV以上を維持していた。つまり、底泥におけるリンの動態及び、底泥溶出機構には有機態リンが大きく影響を与えているものと推察される。成果2は、酸化還元に伴う、リン酸及び有機態リンの動態を明らかにしたものである。底泥内の酸化還元電位がマイナスになった際には、溶存性有機態リンが間隙水中へと放出されていることが明らかになった。一方で、底泥表層において、硝酸による酸化還元電位への影響が指摘されているが、霞ヶ浦においては底泥表層において硝酸がほぼなくなっており、また、底泥中においても酸化還元電位と硝酸濃度との相関はない。一方で底泥間隙水中の有機態リンは酸化還元電位と関係性があることが明らかになってきた。つまり、これまでの定説と異なり、有機態リンに関しては酸化還元電位と関係性があること、また、リン酸の起源としては、特に底泥表層においては、酸化還元電位以外の要因である有機態リンが主たるメカニズムで底泥溶出が行われていると考えられる。 一方で、過去のデータから、塩化物イオン濃度のモニタリング結果を整理したところ、霞ヶ浦では底泥の深層部において、特に塩化物イオンが多いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは過去のデータ整理から、新しいメカニズム研究へと発展させる可能性が出てきた。塩化物イオンと、硫酸イオンなどを解析に加えており、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は塩化物イオンにいよいよ焦点をあて、研究を進めていきたいと考えている。現在では底泥深層部に存在している塩化物イオンが、表層水に含まれた時に起きる反応について詳細に実験を行っていく予定にしている。また、その際、2019年度新たに開発した底泥コアサンプラーや、有機態リンの知見を活用し、解析を行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
霞ヶ浦の底泥サンプリング結果に関して、学会発表などを行う予定であったが、役員を行っている応用生態工学会と、日本陸水学会の日程が重なったため、応用生態工学会を優先して出席した。その結果、差額が生じた。
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