研究代表者である木岡は,昨年に続き、ポリプロピレン製の氷模型を用いた津波氾濫流の模型実験を実施し,主に市街地を対象としたjamやpile up現象についてそのメカニズムを分析した.またこれらの模型実験データを自作した人工知能(AI)によって学習させ,氷の大きさ,流れの条件,構造物の条件などから,パイルアップならびにアイスジャムの発生予測を試みた.さらに今年は,流氷など大量の漂流物の流入を防ぐ防護柵を想定した基礎的な実験も実施し,その利点や性能を評価した.パイルアップ高推定のための理論モデルを構築し,その妥当性を示した.さらに津波ではないもののパイルアップの実現象データのうち,実海域でのice ridgeや着底して生じるstumkhaの幾何データを活用し,本実験結果の妥当性を示すとともに,ベイズ理論による統合を試みた.また,分担研究者の竹内は,昨年に続き,救助や復旧・経済活動に大きな影響を及ぼす道路への海氷及び漂流物の堆積・閉塞に関するメカニズムの把握のため,ポリプロピレン製の氷模型のほか,木材やがれきを想定した様々な漂流物模型を用いた津波実験を実施した.氷の規模(大きさ・氷厚),津波の強さ,護岸・道路の高さ,等から海氷の道路上への堆積状況を分類できること,またその推定法を明らかにした.さらに,北海道内の屋外の避難場所を調査し,冬季津波避難に関する課題を整理した.また,3年間の研究成果をとりまとめ,ハザードマップ作成,構造物の安全性や配置計画,避難行動計画等の津波防災上に資するシステムや技術資料を整備した.
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