本研究は効率的な運搬排雪システムを構築することを目的とする.令和3年度は,前年度に引き続き,台数を増加してETC2.0車載器をダンプトラックに装備し,ダンプトラックの排雪作業場所と雪堆積場との間の往復回数,移動時間,速度等を分析することで,ダンプトラックの挙動データを蓄積した.また,札幌市に加えて岩見沢市,旭川市の運搬排雪作業の現地調査を行い,ロータリー車が雪をダンプトラックに載荷する時に進む距離,ダンプトラック1台あたりの雪載荷所要時間を測定し,地域による作業方法の違いが与える影響について分析した. 全体の研究成果は以下のようにまとめられる. ・中間雪堆積場を考慮した運搬排雪作業効率化の可能性を明らかにした.現状での運搬排雪は,排雪作業場所から雪堆積場へ運搬されるが,作業の所要時間やダンプトラックの必要台数は,作業場所から雪堆積場までの距離が大きな要因となる.本研究では廃棄物処理の仮置き場の概念を援用し,公園等の空き地を活用した中間雪堆積場を考慮した運搬排雪の効果をシミュレーションした.結果として,作業場所から近いところに中間雪堆積場を導入することによって,ダンプトラックが同じ台数ならば作業時間の短縮,作業時間が同じとするならば,ダンプトラックの必要台数を少なくできることを示した. ・ダンプトラックの台数,運搬排雪作業現場と雪堆積場の距離,運搬排雪作業区間の距離から作業時間を導出する理論式を構築し,限られた時間で最低何台ダンプトラックを必要とすればよいかを明らかにすることができた.さらには複数の箇所で同時に運搬排雪作業が行われ,ダンプトラックの総数に制約がある場合,全体の作業時間が最小になるためのダンプトラック配置モデルを構築した.ダンプトラックのETC2.0プローブデータを活用し,作業時間の推定値の精度を向上させた.ダンプトラックの確保が困難となっている現状の解決策を示した.
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