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2019 年度 実施状況報告書

複数解をもつ都市・交通均衡モデルの実証分析のための確率論的アプローチ

研究課題

研究課題/領域番号 19K04635
研究機関東北大学

研究代表者

長江 剛志  東北大学, 工学研究科, 准教授 (30379482)

研究分担者 水谷 大二郎  東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (30813414)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード複数均衡 / 交通ネットワーク均衡分析 / 集積経済モデル / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 高次元シミュレーション
研究実績の概要

本研究では,非単調な都市・交通均衡モデルに対し,均衡解を「点」としてではなく「分布」として取り扱う定量的分析手法を開発することを目的とする.このために,まず,複数均衡解や系のゆらぎを取り扱う既存研究を網羅的にレビューし,既存研究の殆どが取り扱ってきた「個別ゆらぎ」モデルには,(i)主体の数(独立に意思決定をする集団の単位)が増えるにつれ系全体が備える不確実性が減少する,すなわち,「主体数が数百から時には数万に及ぶような場合には現実に観測される不確実性を表現し得ない」という,致命的な数学的構造を存在することを明らかにした.次に,連続時間・連続状態で規模の経済性が働く一般的な枠組み下で「全系ゆらぎ」を導入した都市・交通均衡モデルを構築し,ポテンシャル・ゲームに分類される比較的適用範囲の広いクラスにおいて,系の状態(各経路や各立地を選択する利用者数)が,確率過程に従うとき,その定常分布がボルツマン分布(各状態の生起確率が当該状態のポテンシャルの指数関数に従う)として半解析的に求められることを明らかにした.最後に,この定常分布を具体的に計量するための方法として,マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた計算方法を開発した.提案手法を集積経済モデルに適用し,一極集中となる局所均衡解が複数存在するようなパラメタであっても,一様立地する大域的均衡解が存在するパラメタであっても,選択肢が10~20程度の小規模な問題に対しては,適切な定常分布を効率的に推計可能であることを明らかにした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究成果として,土木学会論文集に査読付き論文を掲載し,搭載が確定した.この論文では,まず,規模の経済性が働く(それ故に本質的に複数の均衡解が存在し得る)都市・交通均衡モデルを取り扱った研究を網羅的にレビューし,それら既存研究のアプローチの限界を示した.具体的には,既存研究の殆どが「個別ゆらぎ」モデルを取り扱っているが,このモデルでは,(i)主体の数(独立に意思決定をする集団の単位)が増えるにつれ系全体が備える不確実性が減少する,すなわち,「主体数が数百から時には数万に及ぶような場合には現実に観測される不確実性を表現し得ない」という致命的な数学的構造を有していることを明らかにした.その上で,本研究は,次に,新たに「全系ゆらぎ」を組み込んだ枠組み下で,ポテンシャルゲームとなる均衡モデルとその確率的ダイナミクスを定式化し,自然な仮定の下で定常分布がボルツマン分布として得られることを明らかにした.このことを活用して,本研究では,最後に,具体的に定常分布を効率的に推定するための手法として,マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた手法を開発し,選択肢が10~20程度の小規模な(それでも既存手法で取り扱えないほど大規模な)問題に対して,定常分布を効率的に計量できることを明らかにした.
以上のことから,本研究は概ね順調に進展していると判断できる.

今後の研究の推進方策

今後は,選択肢が数百~数千に及ぶような現実的な枠組み下で定常分布を効率的に推計するための方法を開発する.その方法として,Langevin tempered メトロポリス法や加速勾配法の活用を検討している.また,研究を進めていく上で,適切な定常分布が求められているか否かを判別するために,得られた分布の次元を圧縮して可視化する方法の必要性が明らかになったため,これについても並行して開発を進める.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 連続主体ポテンシャル・ゲームの確率的進化動学と定常分布推定方法2020

    • 著者名/発表者名
      長江剛志,水谷大二郎
    • 雑誌名

      土木学会論文集D3(土木計画学)

      巻: ー ページ: ー

    • 査読あり

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公開日: 2021-01-27  

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