研究課題/領域番号 |
19K04636
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山田 稔 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (50182556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域公共交通維持・活性化 / 利用者コミュニティ |
研究実績の概要 |
本年度は、当初計画では、目的1)の地域公共交通に対する利用者コミュニティの貢献の効果を比較分析的に評価するモデルを構築すること、そのなかでは、ソーシャルキャピタルの水準、高齢者等の生活環境全般に対する支援必要性の意識、公共交通に対する支援必要性の意識、参加の継続性意識等を評価できるアンケート調査を実施することとした。そして、関連する既存研究等の情報収集を行った結果から、特に高齢者等の生活環境全般に対する支援必要性意識を幅広くとらえたうえで、交通支援への積極性や持続性に影響を及ぼす関係を把握することが重要と考えるに至った。 そこで、特に、交通支援だけでなく、生活環境全般に対する支援必要性意識を幅広くとらえるための調査方法の構築に重点をおいて研究を実施した。ここではICFが定める121個の社会活動を要素として、地域コミュニティが支援するという始点から16項目を抽出し、パイロット調査を実施することでその有用性を明らかにした。パイロット調査では、16項目の異なる面に関する地域住民への生活支援の必要性について、調査対象者間の相対的な意識の違いを抽出することが可能であることが明らかになり、また調査対象者の属性やソーシャルキャピタルの水準の影響についての分析に際しても有用であることが分かった。 また、調査方法の構築に際しては、研究目的3)のコミュニティに対するアンケート調査と同時に実施できるように工夫し、またコミュニティの関係者へのヒアリングを通して調査内容に改良を加えるとともに、調査実施の協力依頼を行うところまでを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、地域公共交通に対する利用者コミュニティの貢献の効果を比較分析的に評価するモデルを構築することであったが、実際にはそのなかで特に高齢者等の生活環境全般に対する支援必要性意識を幅広くとらえたうえで、分析に用いることが重要と考えられたことから、そのための調査方法、調査項目の構築・改善に重点をおいた。そのため、評価モデルの完成には至っていないが、より実質をとらえたモデルとすることが可能となり、次年度に引き続き実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
まず当初計画では今年度に完成させることとしていた、目的1の利用者コミュニティの貢献の効果を比較分析的に評価するモデルの構築を継続し、完成させる。 その後は、当初の計画通り、第2の研究目的である、評価モデルを用いて実際の地域条件に適した手法の選択肢を抽出するとともに、抽出結果が、実際の利用者コミュニティにとって受け入れられるものなのかを調査し、評価モデル自身の改善とその利用の有用性の確認を行う。評価モデルからの知見の示し方によっても受容性が変化すると考えられることから、実際の利用者コミュニティに対する情報の見せ方についての方針を得る。第1の目的で収集したデータで対象とした地域条件をベースとして、さまざまな取り組み手法との組み合わせでの効果発現の程度について、先に構築したモデルを用いて評価する。このプロセスを経て、モデルから示されるその地域において効果的と考えられる手法等を抽出する。 次に、これらに基づいていくつかの特徴的な対象地域を選定し、それに対して抽出された手法を実施することで予測される効果を整理する。そして、これらを地域住民に対する他での先進事例の紹介という形で説明する資料を作成する。そして、それを用いて実際に当該地域の関係者に対して評価してもらうアンケート調査を実施する。 調査では、比較対象としてモデルから抽出された手法以外のものについても載せ、また示し方についてもいくつかの違いを持たせたものを作成して、これらとの比較分析を行えるようにする
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画と異なり、本年度はパイロット調査までで調査方法の有用性の確認及びその改善に重点を置いたため、分析用PCの購入、および実調査に関わる経費を次年度に繰り越すこととなった。 今年度に構築した調査方法を用いて、次年度には実調査の実施、およびその分析を行う予定であり、これらは次年度に使用する計画である。
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