研究課題/領域番号 |
19K04636
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山田 稔 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 特命研究員 (50182556)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 地域公共交通維持・活性化 / 利用者コミュニティ |
研究実績の概要 |
本年度は、これまでに、公共交通利用の活性化を含めた地域コミュニティ等の活動に対する参加意識を知るに当たって地域が達成すべき高齢者等の生活の質に関する意識を調査分析する方法を構築しており、それを活用するため前年度に行った調査データを用い、対象者の個人属性や地域属性等の影響の分析を進め、その結果を学会発表した。 特に、福祉有償運送の運転者と、さらにタクシー運転手を、介助を伴うサービスや買物同行・代行などのサービスを合わせ行っているタクシー事業者、それ以外で乗り合いタクシーなどの高齢者の公共交通ニーズに対応している事業者に区別して分析した。また、本研究でこれまで行ってきた、一般市民対象のWebアンケート、公共交通の利便性が異なる地域での自宅訪問アンケート、公共交通会議に出席している高齢者等に関連する団体やコミュニティ組織の役員を対象とした調査の結果を統合的に扱って比較を行った。 その結果として、一般市民とそれ以外の支援者の間で目指すものは概ね合致する傾向があり、買物・通院以上の多様な目的での外出を活性化できるが、行政の地域交通政策を論じるときの論点となりうることが分かった。高齢者等の交友関係を広げるという視点は、コミュニティ役員や運転者等の支援者は一般市民より重視する結果が得られた。このことから、当事者の発言力が弱くてもこういった層が政策決定プロセスで役割を担うことが重要と考えられる。一般市民のなかでも「近所づきあいが大切」と考える人は、対象者の交遊面を重視する傾向がみられ、同様に地域で交通を考える体制を構築する際の糸口となりうると考えられる。 タクシー事業者が行っているサービスの違いと運転者意識の関係も確認され、特に介助を伴うサービスを行っている事業者では比較的低い年齢で高齢者への生活支援の意欲の高い運転手を確保しており、人材確保策としても参考にすべきであることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、2年度目に、多数サンプルによる調査で調査員を派遣して自宅へ調査票を配布する形式で計画していたが、新型コロナ感染拡大防止の観点から調査員の確保が困難であったため、訪問アンケート調査は4年度目になってしまい、その本格的な分析が本年度となった。さらに、まだ属性別に見て十分にサンプルが確保できていない部分があり、追加が必要な状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに収集したデータに基づく分析をさらに進めるとともに、さまざまな属性の一般市民を対象として、そのなかで交通利用者コミュニティの形成に有益なキーパーソンとなりうる層の抽出を行う。調査分析は、再び、Webアンケートを活用することを予定している。 また、活動を行っている団体に対して、年齢分布など組織の継続性の視点も含め、活動が、主に市町村が作成する公共交通計画を実態が反映されたものとするための合理的な取り組み内容であるかについて評価するモデルを構築し、さらにその評価結果を改善することが実際に活動している利用者コミュニティにとって受け入れられるものなのかを調査し、評価モデル自身の改善とその利用の有用性の確認を行う予定である。 最後に、これらの成果を総合化し、具体的な取組みプロセスの課題を整理するとともに、これらの地域の取組みに対する行政や交通事業者との関係の在り方について提言を行う。ここでは特に、行政や交通事業者からみてどのようなプロセスを経る必要があるか、またその際にどのような選択肢の幅をもって地域住民に臨む必要があるのかについて明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、2年度目に予定していた大規模サンプルを取り扱う調査ができなかったため、Webアンケートに切り替えるとともに4年度目にアンケート調査を実施したが、結果的にこれらの調査・分析に要する費用が当初の見込みよりも小さいものとなり、残額で、さらなるWebアンケートを実施する予定である。 また、予定していた学会発表がオンライン開催となったことでそのための出張旅費が不要になったが、この部分についても、延長した年度のなかでの学会発表等の旅費に使用する予定である。
|