研究課題/領域番号 |
19K04637
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
和田 健太郎 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20706957)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ボトルネック / サグ / 渋滞 / 交通流 / Capacity Drop / プローブ |
研究実績の概要 |
本研究は,単路部ボトルネック(サグ,トンネル等)における渋滞現象を説明するために,単純なモデリングが可能なマクロな交通流モデルをベースとした理論を構築し,その理論に基づく制御手法を開発することを目的とする.具体的には,まず,(i) 渋滞時に生じる特徴的な現象を時空間的に分類し,安定的な現象から順にモデルを構築・拡張する.そして,(ii) 車両軌跡データ等に基づき,理論の検証を行う.最後に,(iii) 最適な制御法について検討を行う.
初年度にあたる令和元年度は,(i) の最初のステップとして,単路部ボトルネック現象のうち最も安定的な現象である Capacity Drop (CD) 現象を説明するモデルを構築した.これは,昨年度から予備的な検討を行なってきたモデルを完成させたものであり,「なぜCD現象が発生・進展するのか?」,「なぜ最終的に安定状態に落ち着くのか?」,「安定状態に至るスピードを決める支配的要因は何か?」などの問いに理論的な説明を与えることに成功している.また,そこで明らかになった特性の頑健性を調べるために,提案モデルをドライバの異質性を考慮した(確率)モデルへと拡張した.そして,確率モデルの平均的な特性は概ね確定的なモデルに一致することも確認した.
上記モデルの理論解析と並行して,(ii) モデル/理論に基づく実証分析も実施した.具体的には,提案モデルが予測する(CD現象関連の)交通流特性と実観測データ(ETC2.0データおよび感知器データ)を定性的/定量的に照らし合わせることにより,モデルの妥当性および従来にない現象の解釈が可能となることを確認した.ただし現時点では,安定状態に限った検証である(安定状態に至る過程の検証は未実施),1箇所のデータを用いた分析に留まる,という課題も存在する.そのため,引き続き実証的な分析を並行して進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では扱う現象を,単純/安定的なものから段階的に複雑/不確実性なものへと広げるアプローチをとっている.令和元年度では,最も安定的なCapacity Drop現象の (i)モデリングと (ii) 実証,を予定通り並行して進めることができており,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2年目の令和2年度では,(i) として,今年度扱った現象より複雑な「渋滞発生時から安定状態に至る過程」の理論解析を進める予定である(提案モデルの拡張も含む).また,(ii) としては,(i) で扱う現象の実証分析手法を確立すること,今年度不十分であった実証分析地点を増やすことを目標とする.さらに,上記の進捗が順調にいった場合には,(iii) の交通制御問題についても計画を前倒しして取り組むことも視野に入れている.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の経費は,主に大量のデータ分析用の計算機・数値計算言語MATLABの購入,関連研究者との打ち合わせ,学会参加旅費,成果発表のための論文掲載料・英文校正費にあてる予定であった.しかし,実証分析では小規模なデータを用いた分析に留まっており,計算機が未購入であるため,次年度使用額が生じている.
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