研究課題/領域番号 |
19K04644
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
鹿田 正昭 金沢工業大学, 工学部, 教授 (50121249)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地上型レーザスキャナ / 点群データ / 最小二乗平面 / 標高 / 評定点 |
研究実績の概要 |
本研究では地上型レーザスキャナを用いた測量の効率化を図ることを最終的な目的としている。本年度はレーザスキャナの特性を調査するための基礎的な解析を行った。メーカーや性能の異なる複数のレーザスキャナで取得された同一地点の点群データを用い、最小二乗平面の算出による比較および4級基準点の標高の値との比較を行った。平面の特徴の差異、標高との較差の有無、また較差が存在した場合は機種によって差異・傾向がどのように現れるかを検証した。 使用した実験結果は石川県白山市白峰地区にて2017年10月および2018年10月に実施したデータである。2017年の実験は白峰地区を広範囲にわたって計測したもので、2018年の実験は2017年に取得された点群データの再現性を確認する目的で2017年の実験より狭い範囲を計測したものである。2017年、2018年の両実験で5機種のレーザスキャナが共通して計測を行った。この範囲内で取得された点群データについて、スキャナによって取得された点群データの成す平面の比較、および4級基準点SK8-1の標高との比較を行った。 その結果、観測対象とする範囲を狭めるにしたがって地上型レーザスキャナで得られる標高値はプラス方向の較差が小さく、マイナス方向の較差が大きくなる傾向が見られた。この変動は点群データに含まれているエラーやノイズが省かれた結果と考えられるが、その場合であれば得られる重心の値は真値に近づく(較差が0に近づく)と考えられ、マイナス方向に大きくなった較差については別の要因があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の解析では、平成29年(2017)10月5日に「地上レーザスキャナを用いた公共測量マニュアル(案)」に準拠した実証実験のデータを使用した。実証実験に使用した機種は4種類である。実験結果は各機器の点群データから平面図を作成して実測平面図と重畳する方法で比較した。 その結果、全体として地図情報レベル500の水平位置標準偏差0.25mは十分に満たしていることが分かった。ただし、水路などの構造物で特に自由勾配側溝のような舗装面と水路が面として連続的な部分では、描画位置の横ずれや水路幅の不一致など真値との差が見られたが、これは、水平面の計測に対する各機種の特性や、図化方法の違いによるものと考えられる。単点での標高については、トータルステーション(TS)実測値と比較して0cm~3cm程度の誤差で取得されており、地上レーザスキャナ(TLS)の値がTS実測値よりも高めの値となる傾向が見られたが、地図情報レベル500の標高標準偏差には十分に収まっている。さらに、平成30年(2018)10月に石川県白山市白峰地区において実施した実証実験と令和元年(2019)10月に金沢工業大学キャンパス内で実施したモデル実験について検討した。解析では両実験で取得された範囲を2m四方、1m四方、0.5m四方と変化させて標高値を算出し最小二乗平面を求めて比較した。 その結果、異なる機種で計測した場合は機種ごとに微小な差異が認められるものの、測量業務に支障が出るほどの大きな差異は見られなかった。また、観測時期が異なる場合でも同一の標定点から計測を行えば点群データが一致する傾向が見られ、データの再現性を確保できていることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
誤差の要因となり得る「スポット径」および「光の屈折」に関するモデル実験を開始した。今後は令和元年度の備品予算で購入したライカ社製BLK360を用いて室内実験で実施する予定である。 実験内容としては、地上レーザスキャナ(TLS)から出射されるレーザビームのスポットを赤外線カメラによって撮影し、その距離依存性について解析する(当該実験は金沢工業大学電気電子工学科山口敦研究室との共同で実施)。 更に「研究実績の概要」でも述べた、平成30年(2018)10月に石川県白山市白峰地区において実施した実証実験と令和元年(2019)10月に金沢工業大学キャンパス内で実施したモデル実験を室内モデル実験として外的要因(温度、照度、湿度などの自然要因)を除去して実施する。これらは屋内用の小型レーザスキャナを用いておこなう(令和元年度備品購入)。 令和元年の研究成果から得られた結果および今後の検討課題と研究の推進方策をまとめると、①レーザスキャナで求められた標高平均を算出するにあたり、それぞれでデータ数が異なる問題がある②一機種のみ別日での観測を行った結果、天候条件が影響したことが他の3機種と大きく異なった値を示した原因となった可能性がある。気温や湿度など気象条件の変化による比較を行う必要がある。③他の観測データはおおむね理論通りの結果となったにもかかわらず、観測距離が40m-60度のデータだけが異常となった。60度から30度までの間に精度が悪くなる限界角度が存在する可能性がある。 これらの点について検討を行うため、屋内用の小型レーザスキャナを用いてモデル実験を継続する予定である。特に③に関しては、異なる季節や場所、時間帯(例えば夜間)などに同様の実験を実施して同じ傾向が表れるかどうか検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度予算において室内モデル実験を実施するための屋内用の小型レーザスキャナを購入したことによる。
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