本研究は「4機体制が整った準天頂衛星と地上レーザを活用した高精度地形データの作成」として大きく2つのテーマ(①地上レーザに係る部分、②準天頂衛星からの高精度地形データの作成と利用)に分けて研究を実施した。 ①では地上型レーザの基本特性を明らかにするため、科学研究費(設備)で購入した屋内用レーザスキャナ(BLK360)を用いた基礎的な解析を実施した。BLK360によって観測対象となる対象物の傾斜角や距離を変えながら取得した複数の点群データを用い、最小二乗平面の算出による比較を行ってレーザ計測による観測特性を検証した。 ②では4機体制が整った準天頂衛星(みちびき)からの位置情報の取得とレーザデータから得られる高精度地形データを利用して、近年、国内でも大きな問題となりつつある見当識障害者(認知症患者)の「はいかい」による行方不明や事故被害を空間情報工学の観点から防止する方法を見出すため、高齢者を被験者としGNSSロガーによる高精度位置情報を取得するための実証実験を行った。実証実験では精神医学を専門とする医師や介護の現場に携わる自治体関係者、民間の介護施設関係者にも協力を得て実施した。これらは概ね①が2019年から2020年、②が2020年から2021年にかけて実施した。 さらに、①の応用実験として消波ブロック模型を用いた実験を実施した。実験では10種類の消波ブロック模型を使用し点群データより平均反射率および点群数を算出した。また、エッジ数、穴抜け数等の要素に対する平均反射率及び点群数との関係性について検討し、地上レーザの基本特性と観測時の問題点について明らかにすることができた。①および②による総合的な成果として、測地衛星(準天頂衛星)からの位置情報の取得と高精度地形データを利用することにより見当識障害者の行動パターンを詳細に分類でき、高齢者等が徘徊により失踪した場合の捜索に寄与できることを実証できた。
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