最終年度では,全町避難からの避難指示が先行解除された広野町と楢葉町を対象として,復興計画書と現地調査および該当する調査時期の住宅地図を用いて,土地利用構想と復興事業の進捗に伴うその変化について調査・分析した。 前年度までに構築したデータベースに2020年国勢調査(確定値)を用いて人口構造と小地域単位に着目してその変化を調査・分析し,復興計画の内容と照らし合わせる形で復興事業の進捗やその人口変化に与える影響を考察した。原発事故発生前の総人口の回復率は高くなってきているものの,原発事故発生前に基幹となっていた産業への就業者は回復することなく,新たな産業への就業者が増加するなど就業構造は原発事故発生前と異なる形態を示している。また,小地域単位でみても土地利用構想上では既存農地・農村集落に位置づけられる地域に,宿舎や住宅が建設される形で人口が増加している。そのため,新たな産業を誘致したり新たな場所に都市施設や住宅地を整備する計画の進捗を確認することができる一方で,被災した従来からある企業や商店街などの早期再開には至っていない課題を確認することができた。 2019年9月には避難指示を受けた町村の枠を超えて「ふたばグランドデザイン報告書」が発行されている。そこでは,「ふたばの復興は,震災前以上の繁栄を目指すこと」として「生業の再生・新産業の創出」や「住んでみたい地域づくり」について,町村間の連携により取り組む姿勢が示されている。現状は町村ごとに復興計画を策定して,外部からの支援を得ながら新産業の創出や都市施設の整備,まちづくりに取り組まれており,誘致合戦のような綱引きを町村間でしている状況にある。そのため,未だ途上にある生業の再生や従来からある商店街を中心とするまちの再生と新産業の創出および大規模施設の立地を通した浜通り地域の復興に関係町村が連携して取り組む必要がある。
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