研究課題/領域番号 |
19K04648
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
濱岡 秀勝 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (70262269)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 漫然状態 / 脳波 / フーリエ変換 |
研究実績の概要 |
高速道路は一般道路と比べて良い線形であり、信号による停止や歩行者等の影響を受けないため、ドライバーの覚醒度が低下し漫然運転を誘発する恐れがある。漫然運転は、自動車事故の要因の8%を占め、死亡事故へとつながる可能性もある。したがって、漫然運転を解消する道路環境の構築は必須と考えられる。 本研究では、高速道路走行時の漫然運転による状態を表現するために脳波を利用することとし、その基礎的な分析として脳波解析を実施した。被験者による室内実験をもとに、脳波解析した結果、覚醒度を表現するに最も良好な指標は、検討した30を超える指標の中で「α/全体」であることがわかった。しかし、指標間の相関をみると、まだ決して十分とは思われないため、さらにデータ分析方法を高めていく必要がある。 本研究において確認できたものとして、脳波測定においては様々なノイズを拾いやすく、目的とした脳波を正確に得られない可能性が挙げられる。実際に、予備実験においては、多種なノイズによって望ましい脳波を取得できなかった。そのため、実車実験ではなく室内実験に変更する、など様々な変更を余儀なくされた。室内実験においても、脳波の波形をみると、ノイズによる波形の乱れが生じていた。今回は、その目視によりノイズ除去を行ったが、今後、多くのデータ解析の実施を考えると、目視によるノイズ除去は望ましくない。ゆえに、ノイズの除去方法についても確立する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、令和元年度中にドライバーの漫然状態を示す脳波分析方法を確立する予定であった。しかし、得られた分析結果には、課題が残されていて、もう少しの精度向上が必要ではないかと考えている。ただ、この点については、継続的に分析を進めていることもあって、令和2年度半ばには解決できる。令和2年度にて実施する研究実施項目は脳波解析と並行して準備を進めるため、令和2年度末には当初の予定通りの進捗状況になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、長時間の自動運転による注意力低下を定量的に把握する。厚生労働省より、4時間のうち30分は休憩すること、高速道路は2時間程度を目安に休憩することとの指針があるが、それを自動運転走行時のドライバーの注意力低下の観点から評価する。結果として、自動運転走行時における望ましい連続運転時間を明らかにできる。 また、注意力を維持可能な道路インフラ面からの対策も検討する。高速道路は設計当初から、ドライバーの注意力維持のため、道路は直線的ではなく適度にカーブを入れるとの思想で設計されてきた。自動運転環境での注意力持続のためには、道路線形をどのように変化させるとよいか、平面曲線部の曲率半径やその出現頻度を変化させた環境等をもとにドライバー評価を実施する。その結果、自動運転に対応した望ましい道路設計を明らかにできる。 さらに、ゲームを援用した対策についても検討する。例えば、特定の場所での車線変更や走行速度の変更等の課題を決め、その成否により褒美が決まるとの内容である。このような褒美は、ドライバーへ注意力の維持を働きかけるであろう。ドライバー実験により、ゲームの内容と注意力維持の関係を評価する。 なお、褒美の多寡については、通常走行だけでなく、通勤時、観光時、若者・高齢者などによって異なるものである。ゆえに、それらを組み合わせた調査も重要である。最終的には、褒美として何が有効か、褒美の価値はどれくらいが妥当であるか等を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、十分な精度での脳波解析方法を実施し、その結果を元に、実走行・シミュレータ実験の結果比較を行う予定であった。しかし脳波解析方法について、もう少し精度を高める必要があると考えているため、これら実験実施をできないでいた。そのため、被験者への謝金など、費用が発生していない。 今年度は、当初予定の研究に加えて、過年度に実施予定であった走行実験も実施する。そのため、研究費の使用計画としては、スケジュール通りに進めることができると考えている。
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