研究課題/領域番号 |
19K04648
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
濱岡 秀勝 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (70262269)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 自動車運転 / 漫然状態 / 脳波 / フーリエ変換 |
研究実績の概要 |
本研究では、前年度の成果を踏まえ、高速道路走行時の脳波の解析に最も適している指標の精緻化を目的に被験者実験によるデータ取得を踏まえた、解析をを行った。その結果、漫然状態を示す最適な指標はα波をさらに3つに分けたα1~α3のパワー増減に着目すると良いことがわかった。その考えとして、リラックス状態で優位に現れるというα波に着目し、α波の7~13Hzの広い幅ではなく、α1~α3というより細かい区間で見たことが挙げられる。 動画視聴実験の脳波データをもとに解析した結果、指標の有効性を確認できた。しかし、ノイズが多く含まれるデータもあり、これらについては今回の分析では使用できていない。今後は、それを除去する方法を考えながら、データ解析する必要がある。さらに、実際の走行時に脳波データを取得したところ、振動や体動によるノイズが出現し、得られたデータについてもα波の増加やβ波の低下といった特徴が見づらくなっていた。その原因として、脳波計がノイズを拾いやすいこと、また最初は脳波計をうまく装着できていても時間経過とともにその位置がズレてしまうこと、などが考えられる。特に走行実験では振動やドライバーの体動によるノイズが多く、それを防ぐための対策としてタオルでしばって脳波計を頭に固定したが、これもタオルでしばること自体が刺激となって脳波取得を妨げている可能性が考えられる。 ただ、昨年の結果に比べて、確度の高い検出方法を確定できたことは大きな成果であり、この結果をもとに最終年度の研究へと進化させてゆきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定とは異なるが、令和2年度にようやく漫然状態を示す方法論を確立することができた。コロナ禍のもと、研究の実施が難しい状況もあったが、3年間の研究計画において、最も困難と考えていた目標をしっかりクリアできたことは大きな成果である。 この結果を踏まえて、最終年度はしっかりと成果を見出したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
自動運転の過渡期においては、通常の車両と比較的速度の低い自動運転車両が混在することになる。このような速度差のある状況は、交通安全上望ましくない。また、走行速度の低い自動運転車両に対して、近年問題となっている「あおり運転」など、さらに危険な状況をよびおこす危険性もある。こうした環境を明らかにするため、まずは速度差のある交通流における危険性を明らかにする。そして、その状況を改善するために必要な条件を整理する。 具体的には、ドライビングシミュレータ空間内に、走行速度の高い車両群と、数台の遅い車を混入した環境を構築する。そこでの被験者実験により、車群の危険性評価を行う。操作変数として走行速度の低い車両の混入率、その車両の判読しやすさなどを考えている。結論としては、自動運転車両を明示するステッカーによる改善効果が大きいと推測している。 自動運転走行中の高齢者は交通環境が変化した際の対応が若年者に比べて遅く、またその時の行動は極端になりやすいことがわかった。こうした状況は、当該車両ではなく周囲の車両に悪影響を及ぼす。ゆえに、過渡期においては、このように前方車両が突然の行動をすることも考えられ、それに対応した安全対策も示す必要がある。 そこで、ドライビングシミュレータ上に突然停止や急ハンドル車などのイベントを発生させ、後続の通常運転車両、ひいては交通流全体への影響を把握する。これら研究成果を踏まえた分析により、総合的に望ましい交通環境を創出できると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、初年度に十分な精度での脳波解析方法を実施し、次年度にはその結果をもとに、実走行・シミュレータ実験の結果比較を行う予定であった。しかし脳波解析方法に ついて、もう少し精度を高める必要があると考えているため、これら実験実施をできないでいた。そのため、被験者への謝金など、費用が発生していない。 今年度は、これまでの成果を踏まえ、シミュレータを用いた被験者実験を実施する。そのため、研究費の使用計画としては、スケジュール通りに進められると考えている。
|