研究課題/領域番号 |
19K04652
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松尾 幸二郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50634226)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 事故リスク / 歩行者衝突警報 / プローブデータ / 統計モデル / 交通安全管理 / ドライブレコーダ / 経験ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
2019年度は,①本研究で用いる歩行者衝突警報(PCW)情報の信頼性の分析,および②PCW情報を考慮した歩行者事故危険性評価モデルの構築を行った.①PCW情報の信頼性の検証においては,PCW情報とドライブレコーダ(DR)映像とのマッチングを行った上で,PCW発生時に実際に歩行者が存在していたか,またその危険度はどの程度であったかの分析を行った.結果として,得られたPCW発生時のDR映像の総数は332件,その内PCW発生時に当該車両前方に歩行者が存在していた場合は306回であり,精度は92.2%と高いことが確認された.また,PCW発生時の速度が大きいとき,およびPCW発生地点の道路規模が大きいときにおいて,歩行者がいないにも関わらずPCWが発生しるケースが確認された.また,PCW発生時のDR映像から主観的に危険レベルを評価したところ,PCW発生地点の車線数が少ない場合や対象車両通貨量が少ない場合において危険レベルが高いことが示された.要因として,車線数が少ないような狭い道では,歩行者と車両が接近することが多く,また,対向車等があった場合も回避がしづらいためと考えられた.また,交通量が少ないほど,歩行者側は車両に対して油断していることが多く,警戒が不十分であったため,PCW発生時の危険レベルが高くなったことが考えられた.②PCW情報を考慮した歩行者事故危険性評価モデルの構築においては,PCW発生件数や事故発生件数に対して,説明変数による平均的な影響と,地点固有の要因による影響とのバランスを適切に考慮する経験ベイズ縮約推定を用いた手法を整理し,現状ではサンプルサイズが大きくないPCWデータ活用に役立つことを示した.また豊橋市における分析より,経験ベイズ推定を用いたPCW発生率や PCW相対リスクにより,歩行者事故発生件数モデルの適合度が向上することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ほぼ当初の計画通り,①本研究で用いる歩行者衝突警報(PCW)情報の信頼性の分析,および②PCW情報を考慮した歩行者事故危険性評価モデルの構築を実施でき,学会発表,論文投稿も行っている.さらに,2020年度実施予定であった,「上述した統計モデルにより,優先的に対策を実施するべき歩行者事故危険地点を1~2地点程度抽出し,豊橋市道路管理者の協力の下,実際に対策を実施する」という点について,すでに実施ができているため.
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今後の研究の推進方策 |
すでに,「上述した統計モデルにより,優先的に対策を実施するべき歩行者事故危険地点を1~2地点程度抽出し,豊橋市道路管理者の協力の下,実際に対策を実施」している.そこで,2020年度は,当該地点において,対策事前事後で,本手法による事故危険性評価値がどの程度変化したかを分析する.事故危険性が減少していれば本手法の実用性が検証できたと判断し,減少していなければ対策自体もしくは本手法に課題があるのかを詳細に議論する.また,道路管理者にヒアリングを行い,実務での有用性や納得感などについて評価してもらう.また,2021年度は,計画通り,上述した統計モデルにより抽出された歩行者事故危険地点を可視化するためのWebアプリを構築し,各事故危険地点について,道路利用者の主観に基づき注意意識や納得感などについて5段階程度でレーティングできる機能を実装する予定である.そして,対象地区市民から自治会を通して300名程度を募集し,本アプリにより事故危険性地点マップを提示し,アンケートを回答してもらい,注意意識や納得感などについての比較を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
一般車両プローブデータ(パイオニア社製)が学内予算にて購入できたため,その分が次年度使用額として生じた.歩行者事故危険地点を可視化するためのWebアプリの構築に使用予定である.
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