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2020 年度 実施状況報告書

AIによりシステム最適挙動を学習する自動走行車両の交通流と運転挙動への影響分析

研究課題

研究課題/領域番号 19K04660
研究機関名城大学

研究代表者

松本 幸正  名城大学, 理工学部, 教授 (30239123)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードAI / 深層学習 / 自動運転 / 交通流 / シミュレーション / マルチエージェント / 信号交差点 / 協調学習
研究実績の概要

本研究では,自動走行車両が混在する近未来の道路交通環境を想定し,オンラインの信号情報やリアルタイムで観測される周辺交通環境に応じて,エリア全体の総走行時間を最小化するシステム最適挙動を取る自動運転車両のモデル化を目指している.最適走行挙動は,信号情報や交通ビッグデータに基づいてAI(人工知能)によって学習させ,信号機との協調制御も可能なシステムを,マルチエージェントを用いて開発する.これら最適挙動を取る自動運転車両の混在が,エリア全体の交通流に及ぼす影響をマイクロシミュレーションによって評価するとともに,個々のドライバーに対しての運転挙動への影響もドライビングシミュレータによって把握する.
令和2年度は,過年度に開発した車両と協調学習する信号制御システムを,複数信号交差点に適用できるように拡張した.個々の信号機は単独のエージェントであり,車両エージェントと信号エージェントが情報交換をしながら協調して学習するシステムである.シミュレーションの結果,協調制御することによって平均旅行時間や平均停止時間が小さくなることがわかった.ただし,単独信号の場合に比べて,協調制御の効果は大きくないことが示唆された.並行して,交通ネットワークを対象として,交通ビックデータに基づいて最適な経路を深層学習によって事前に予測するシステムの構築を進めた.3ノード×3ノードから構成される簡単な格子状のネットワークにおいて,2つのOD間の経路を対象に,全リンク交通量の時系列観測値に基づいて最短経路を予測する深層学習モデルの開発を行った.その結果,モデルの学習過程においては,現時点,10分前,20分前,30分前と過去の観測データを用いるほど精度は高まったものの,予測においては,逆に,過去のデータを用いるほど精度は下がる結果となり,最短経路の判別結果は70%程度になった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和2年度は,年度当初から新型コロナウィルス感染症拡大防止のため,教員ならびに学生は,研究遂行のための入構が許可されておらず,研究室PCにインストールされているソフトウェアや解析機器が使えない状況であり,研究計画に遅れが生じた.その後も,在宅が推奨される環境下で,遅れを取り戻すことが難しかった.
そのような制限された環境下ではあったが,信号交差点を通過するための最適な挙動を取る車両と信号機が情報交換しながら協調して学習するマルチエージェントシミュレーションを,複数交差点を対象にできるように拡張した.しかしながら協調学習の効果が期待されていたものよりも小さく,その要因の解明にまでは至らず,システムの改良ができていない.また,今年度に開発予定であった右左折車両を含めた道路環境の構築も未着手である.
過年度に研究計画を前倒しして着手したビックデータを用いた走行状況判定モデルの開発については,交通量データのみを用いたモデルの開発に留まり,十分に高い精度の予測モデルも得られておらず,その改良も進まなかった.
以上のことから,システム開発やモデル構築についてはほぼ予定通りではあるが,未着手の部分や予測の精度がまだ十分に高くないことから,”(3)やや遅れている”と自己評価することにした.

今後の研究の推進方策

前年度に開発した複数の信号交差点を最適に通過する車両と信号機が情報を共有しながら協調学習するシステムの開発を継続する.まずは,複数条件下でのシミュレーションを再実施し,協調学習の効果の妥当性を検証する.それらの結果を踏まえてシステムの改良を加えるが,信号交差点同士の情報交換並びに協調学習の仕組みの導入を検討する.続いて,右左折車両も発生させ,実際に近い環境でのシステム開発を行い,様々な条件下での有効性を検証する.
並行して,交通ビックデータによって最短経路を予測する深層学習モデルの高度化を図る.交通量に加え,オキュパンシー,地点速度,各信号での滞留台数,信号サイクルなどのデータも利用できるようにモデルを拡張する.
さらに,これらの自動運転車両の走行軌跡を3Dのドライビングシミュレータ上に再現し,自動運転車両が一般車両に混在して走行する環境の中を実際に運転体験してもらうシミュレーション実験を行う.この実験では,自動走行車両の挙動が不快・不自然ではないか,危険は感じないかなどの官能評価を行ってもらうとともに,被験者の運転操作を観測して,運転挙動への影響を定量的に把握する.
なお,今度の新型コロナウィルス感染症拡大状況によっては研究活動が制限を受けることも考えられる.その場合には,必要に応じて研究計画を見直す必要がある.

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額は973,975円である.これは,予定していた国際会議ならびに国内学会への参加を取りやめたこと,ならびに,補助を必要とする研究の遅れから謝金が予定よりも少なくなった結果による.
次年度使用額973,975円は,次年度の研究費に合わせて使用する.次年度の研究経費として,物品購入費,旅費,人件費・謝金,その他の経費に割り当てて使用する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 複数交差点を対象とした信号制御と協調学習する自動運転車両による交通流への影響分析2020

    • 著者名/発表者名
      和田拓巳・松本幸正
    • 学会等名
      令和2年度土木学会中部支部研究発表会

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公開日: 2021-12-27  

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