研究課題/領域番号 |
19K04662
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 崇史 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (80735712)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜ろ過 / 破断検知 / 中空糸膜 / ナノバブル / 膜劣化 |
研究実績の概要 |
2020年度は、これまで定量的に考慮されてこなかった膜モジュール内で破断した中空糸膜で生じるろ過流量および未ろ過の流れである短絡流の流量について、実験的および数値解析手法を用いて評価し、また膜モジュールの阻止性能への影響を定量的に評価した。微粒子ろ過実験に基づいて破断膜における短絡流量とろ過流量を推定した結果、およそ10%程度の誤差で定量することができた。また有限要素法に基づくマルチフィジックス解析より,破断膜の短絡流量とろ過流量を微粒子ろ過実験に基づく手法と同程度の精度で定量評価できた。これらから、破断膜においてろ過流量の短絡流量への影響は無視できず、短絡流量が抑制されていることが定量的に示された。破断した中空糸膜のモデルを構築し、マルチフィジックス解析を用いて異なる破断膜の長さ,内径,透過性が破断膜の粒子阻止性能に与える影響を再評価したところ,破断膜が長いほど,また破断膜の内径が小さいほど,また破断膜の透水性が大きいほど,ろ過流量の割合が大きくなり,粒子阻止性能が大きくなることが示された.これらより,中空糸膜モジュールとしての微粒子阻止性能(Log除去数:LRV)と膜破断本数や膜破断位置との関係性が導かれた。 また、前年度用いたFBG型圧力センサに対して微小電気機械システム(MEMS)を応用した光ファイバセンサ型圧力計が10倍程度の精度であることが確認された。 また、劣化膜における阻止性能の低下のモニタリングを目的として、ナノバブルの応用可能性を検討した。浄水場で使用されていた使用済み膜と未使用膜を用いてナノバブルを含む原水をろ過し、その阻止性を解析したところ、使用済み膜では未使用膜に比べて200 nmを超える大きさのナノバブルの阻止性が低下したことから、ナノバブルの劣化検知への応用可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、実験的手法および数値解析手法を組み合わせることで、中空糸膜モジュール内の破断膜における短絡流量とろ過流量を定量的に推定し、破断膜の本数や破断位置などによりモジュールとしての阻止性能に与える影響を定量的に評価することができた。微小電気機械システム(MEMS)を応用した光ファイバセンサ型圧力計の精度がFBG型圧力センサより高い精度を持つことが示され、膜モジュール内のより小さな圧力変化を捉える可能性が示唆された。 また膜劣化影響を検知するための手法として、水質に影響を及ぼさないナノバブルの応用可能性が示唆された。 以上より、概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を受け、 光ファイバセンサを用いた膜破断検知手法の開発を目指し、 1)微小電気機械システム(MEMS)を応用した光ファイバセンサ型圧力計、またはFBG型圧力センサを用いて、膜モジュール内の圧力分布変化を実験的に捉え、構築した膜モジュール内の流動モデルと組み合わせることで、光ファイバセンサによる膜破断状況および膜モジュールの性能低下の予測可能性を検証する。同時にセンサに要求される精度も検証していく。
2)また、膜破断に至らない膜劣化を含む膜モジュールの異常検知を目的として、劣化検知への応用性が示唆されたナノバブルの阻止性の変化を経時的に捉え、時系列解析、統計的学習を用いて解析することで、感度の高い異常検知手法への応用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の支出は概ね予定通りであり、2019年度に生じた次年度使用額を繰り越した状況となっている。2021年度に、これまで繰り越してきた新規の光ファイバ型センサを導入する予定である。
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