研究課題/領域番号 |
19K04663
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
遠山 忠 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60431392)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 下水 / バイオマス / 資源化 / 創エネルギー / ウキクサ / 微細藻類 |
研究実績の概要 |
2020年度は、昨年度に選抜した微細藻類(Chlamydomonas reinhardtiiとEuglena gracilis)、ウキクサ種(Spirodela polyrhiza)のバイオマス生産とエネルギー利用できる有価物生産を効率化する培養法について検討した。 微細藻類2種に関しては、下水処理水に農・食品系有機廃棄物(コーンスティープリカー、廃糖蜜や廃ワイン)を混合した排水を利用した培養によって、バイオマスと油脂の生産性を向上させることに成功した。有機廃棄物中の糖、アミノ酸、有機酸やアルコールなどが微細藻類の炭素・エネルギー源となり、混合栄養(光独立と従属栄養を併せたもの)的に微細藻類が増殖したため、そのバイオマスと油脂の生産性が促進したものと考えられた。 さらに、培養した微細藻類に短時間の塩ストレスをかけることによって、油脂合成遺伝子群の発現が高まり、油脂の生産性をさらに高めることにも成功した。 また、微細藻類2種とウキクサのバイオマス生産性を高める共生細菌を分離した。その共生細菌がそれぞれの微細藻類とウキクサの増殖と代謝系を活性化する機構を遺伝子発現解析、生理・生化学試験とメタボローム解析等で明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は『ウキクサと微細藻類のバイオマス生産性の向上とその機構の解明』に取り組み、一連の実験から、バイオマスとエネルギー資源の生産性を高める培養法を提案し、バイオマス生産性を高める共生細菌を分離することができた。さらに、その生産性向上機構の一端を明らかにすることができた。このことから、当初計画した研究目標を達成することができたと評価できる。また、その成果を学術論文1報で発表することができ、さらに、学術論文3報を投稿中である。 以上のことから、本研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、『実証実験とエネルギー生産を最大化した下水処理場デザインの提案』を行う。具体的には、ウキクサと微細藻類を下水で培養し、そこから嫌気性消化ガスを生産する、あるいはバイオディーゼル原料の油脂を抽出するリアクターを設置し、下水からのエネルギー生産の実証試験を実施する。 試験中にバイオマス生産とバイオガス生産をモニタリングし、得られた値を下水処理場実規模に変換して、処理場当たりのエネルギー生産量を試算する。さらに、算出したエネルギー生産量と経済性などを考慮して、エネルギー生産量を最大化した下水処理場の新しいデザインを複数提案する。各案の課題を抽出し、その解決方策を検討して、社会実装の道筋を考察することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、一部の研究の進行が遅れたこと、また、学会等が中止またはWeb開催となったことから、次年度使用額が生じた。 2021年度は、研究計画に合わせて定期的にチェックしながら予算を使用する。
|