研究課題/領域番号 |
19K04665
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 明 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20215445)
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研究分担者 |
嶋寺 光 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20647367)
松尾 智仁 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30793674)
瀧本 充輝 (財)ひょうご環境創造協会(兵庫県環境研究センター), 兵庫県環境研究センター大気環境科, 研究員(移行) (60788264)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 畳み込みニューラルネットワーク / 画像分類 / 位相差顕微鏡 / 大気汚染 |
研究実績の概要 |
本研究では、一般環境中に飛散するアスベスト繊維について、従来の人間の目視による計数よりも高速かつ高精度な自動計数システムを開発すること、アスベスト発生の緊急事故時に素早く周辺地域住民の暴露評価ができるシステムを構築することである。今年度は、このうち前者の自動計数システムに注力して研究を行った。 研究では、昨年度開発した畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を中心に、自動計数システムの開発を行った。まず、コアとなるCNNは、200pix×200pixの位相差顕微鏡画像について、画像中にアスベスト繊維があるかどうかを判別する。学習には実際の解体工事現場で採取された位相差顕微鏡画像について、熟練者がアスベストをマークした画像を教師データに用いた。CNN自体は昨年度開発したものと同様の構成であるが、パラメータフィッティングと教師データの大幅な追加により推定精度が向上している。具体的には、正解率で95%以上、適合度と特異度から計算されるF-scoreで60%以上の推定精度を得ることができた。 加えて、今年度は顕微鏡画像を自動的に任意の(たとえば200pix×200pixの)小領域に分割するシステムを作成した。これにより、教師データの作成、および顕微鏡画像からのアスベスト繊維の計数について自動化が進んだ。特に推定時においては、顕微鏡画像を入力するとモデルがアスベスト繊維を検出した領域をマークした画像を返すシステムができており、直感的な利用が可能になったと考えられる。 今年度は1件の学会発表を行った。(ただし、学会申込が5月末だったため、発表内容は昨年度の成果を中心としている。)今年度の成果については、2021年度に学会発表および論文投稿による発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度までの研究実施計画について、「アスベスト繊維の顕微鏡画像データの収集」、「同データの分類とラベル付による機械学習のための教師データの作成」、「機械学習に用いるモデルの選定」、「CNNを用いたアスベスト/非アスベストの分類器の作成」については計画通りの進捗であり、十分なデータ収集と推定精度が得られている。一方、計画では本研究で用いるCNNモデルと先行研究のモデルを比較し、本研究モデルの優位性を確認する予定であったが、先行研究で用いられたモデルを新たに再現することが困難であることがわかったため、計画を変更し、CNNモデルの精度検証はモデルの推定精度(正解率やF-score)で判断することとした。また、CFDによる周辺地域のアスベスト濃度推定、緊急暴露評価システムの構築については、2021年度の課題として積み残している。
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今後の研究の推進方策 |
自動計数システムの構築に関しては、すでにそのコアとなるCNNの推定精度が一定程度確保できており、また一連の処理の自動化も順調に推移している。理想的には、サンプリングから試料の作成、顕微鏡での撮影から計数までを一貫した自動化が望ましいが、本研究の予算規模ではハードウェアの開発などが困難であるため、顕微鏡画像の作成までは従来どおりの手法を踏襲する。そのため、非技術者の利用を想定したインターフェースの作成などを行い、自動計数システムの完成を目指す。並行して、CNNの推定精度向上にも取り組む。 CFDによる濃度推定、緊急暴露評価システムについて、測定されたアスベスト濃度から発生量を推定し、当日の気象観測データから発生時の気象条件を再現することで、CFDによる周辺建物のアスベスト濃度分布および暴露評価を行うシステムを構築する。 本研究は2021年度が最終年度であるため、研究成果の適切な発表についても随時行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は打ち合わせや学会発表が対面形式からオンライン形式となり、当初予算よりも旅費の支出が少なくなった。次年度は、より積極的に研究成果を学会等で公表し予算を使用する計画である。
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