研究課題/領域番号 |
19K04670
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 克己 日本大学, 生産工学部, 准教授 (50788544)
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研究分担者 |
高橋 岩仁 日本大学, 生産工学部, 准教授 (20453871)
保坂 成司 日本大学, 生産工学部, 教授 (70328699)
森田 弘昭 日本大学, 生産工学部, 教授 (90355933)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 不明水調査手法 / 水温法 / 雨天時浸入水 / ニューラルネットワーク / 成分分解 / 検出力 |
研究実績の概要 |
研究実績は2項目あり、その概要は以下の通りである。 「AIを用いた水温法による雨天時浸入水の推定手法の研究」については,AI学習のうちニューラルネットワークを用いて流量,水温を教師データとし,これを回帰するのに必要な説明変数を見出すことにより,晴天時と雨天時に分けた流量,水温から雨天時浸入水量や雨天時に低下する水温を短時間で効率的に推定できるようにした.計測期間中の流量と水温の時系列データは,流量については1時間間隔の時系列データで解析できたが,水温データは10分間隔のデータが必要であった.汚水管路の流量調査や水温調査で得られる時系列データに対してAIを活用して晴天時,雨天時の流量,水温に分けることができた. 計測期間中の流量,あるいは水温の総和に対する浸入水量や雨天時低下水温の比を使うことにより計測点ごとの雨天時浸入水の影響を評価した. 次に「時系列水温データの成分分解による雨天時浸入水の解析」については、雨天時不明水調査法の1つである水温法で得られる時系列水温データに着目し,計測水温の特徴を踏まえ計測水温を移動平均法による成分分解し,分解した水温を晴天時と雨天時に分けた.晴天時と雨天時の水温を分布の形とし,それぞれの分布の違い(差)を非超過確率(検出力)で表し,この確率を指標にすることにより,計測点間における雨天時浸入水の影響を評価できるようした.AI学習の1つであるニューラルネットワークを使い,降雨による計測水温の低下量(低下水温)を推定し,計測期間中の降雨による水温低下量の総和に対する計測水温の総和の比を求め,この比と成分分解で得られた指標を比較することにより指標の有効性を確かめた.また,一部の水温計測点で流量調査を行い,これもニューラルネットワークで雨天時浸入水量割合(=総雨天時浸入水量/総流量)と成分分解の指標を比較することにより指標の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のテーマはは、以下に示す2項目である。1)下水道管内に浸入する雨天時流入水や地下水といった不明水を下水温の変化から潜入区域や浸入スパンを特定する研究、2)下水道管内に不明水の流入とともに周辺の土砂を引込むことに起因する路面下空洞を把握し、道路陥没予測を行う研究、である。 このうち、1)については、AI学習のうちニューラルネットワークを用いて流量,水温を教師データとし,これを回帰するのに必要な説明変数を見出すことにより,晴天時と雨天時に分けた流量,水温から雨天時浸入水量や雨天時に低下する水温を短時間で効率的に推定できるようにした.計測期間中の流量と水温の時系列データは,流量については1時間間隔の時系列データで解析できたが,水温データは10分間隔のデータが必要であった.汚水管路の流量調査や水温調査で得られる時系列データに対してAIを活用して晴天時,雨天時の流量,水温に分けることができた. 計測期間中の流量,あるいは水温の総和に対する浸入水量や雨天時低下水温の比を使うことにより計測点ごとの雨天時浸入水の影響を評価した. 2)については、令和2年度に実験、ならびに研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究テーマは、下水道管内に不明水の流入とともに周辺の土砂を引込むことに起因する路面下空洞を把握し、道路陥没予測を行う研究である。令和2年度は、実験フィールドを大学キャンパスに設けて研究を行う計画である。まず、模擬地下空洞として自然空洞を模した紙パイプ(ボイド管)、下水道管や水道管など人工構造物を想定した塩化ビニル管や鋳鉄管の3種類を地下に埋設して、埋設されている地盤周辺に令和元年度に購入した振動発生機により、地盤自体を加振させる。振動している地盤を令和元年度に科研費で購入した微振動受信機によって、振動波形を視察して振動発生機の波形との相違から地下に存在する空洞を特定する試みを行う。 実験を遂行するにあたっての人的資源は、卒業研究生を充てる予定であり、より多くのデータを収集して、路面下空洞、もしくは地下埋設物の特性を見出そうとするものである。しかしながら、現在、コロナ感染予防対策のため、学生の入校が禁じられており、実験が遂行できていない状況である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算は、申請当初は不明水調査のデータ収集がが学外のため、フィールドまでの交通費と水温センサーやデータロガーといったデータ収集機器等を多く充てていた。一方で、路面下空洞特定手法については既存の機器を用いて研究を行う予定であった。しかし、路面下空洞調査の研究では、正確な波形を発生させる振動発生機が必要であり、またその波形を的確に受信するセンサーが必要であることが判明した。逆に不明水調査については、共同研究企業である中日本建設コンサルタント株式会社の厚意もあり、現地でのデータ収集作業や調査が割愛となった。このため、予算を路面下空洞特定手法の開発に振り向けた結果、次年度使用額が生じた理由である。 また、令和2年度以降の使用計画は、研究発表用のための学会発表費用を計画している。
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