研究実績の概要 |
省エネ・低炭素な廃水処理方法として認知される嫌気性廃水処理プロセスの安定化や高度化を目指し、廃水処理プロセスの中に生息する機能未知な未培養微生物の分離培養およびそれら微生物の機能解析を実施した。これまでの当該研究課題において分離培養に成功した、有害化学物質である水酸化テトラメチルアンモニウム (TMAH) を分解処理するMethanomethylovorans属メタン生成古細菌、モノエタノールアミン (MEA) を分解する真正細菌の詳細な機能解明のため、分離株の生理的・遺伝的特性に加えて、分離株の近縁種についても解析を実施し、分離株との比較を行った。 既存のMethanomethylovorans属メタン生成古細菌である3株 (Mmv. hollandica, Mmv. uponensis, Mmv. thermophila)を菌株保存機関より入手し、本研究で分離したNY-STAYD株をトリメチルアミン (TMA) で培養した際の比増殖速度を測定した。結果、それぞれの菌株の比増殖速度 (1/d) は、0.69, 0.97, 1.33, 0.63となったことから、TMA基質による増殖では、NY-STAYD株は既知株であるMmv. hollandicaと類似していた。またNY-STAYD株のTMAH基質による培養での比増殖速度は0.30-0.41程度であったことから、TMA基質での培養におけるそれとは若干異なっていた。このことから、NY-STAYD株におけるTMAH分解機構は、TMAとは異なる代謝経路で遂行されていること、また、TMAの分解においては既存の分離株と同様な機構で行われていることが示唆された。
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