本研究は、近赤外カメラから得られた近赤外画像データを分析し、道路脇の樹木および街路樹を対象として、生育不良の樹木を抽出する手法を開発することである。道路環境は道路脇の街路樹が生育するには必ずしも良い環境ではなく、そのため樹木の老朽化が一般の環境にあるそれよりも早く進んでおり、各地で倒木による被害が発生している。現在の道路脇・街路樹点検は、樹木の専門家が歩行もしくは低速で走行する車から目視で樹木を観察し、状態が悪そうな樹木を観察することによる行われている。状態が悪そうな樹木を確認したら、その樹木に対して触診・打診など詳細な点検を行うことで樹木の状態を判断している。 研究の目的は、道路脇の樹木に対し、健全な樹木と不良樹木を選別するスクリーニング処理を自動化することである。手法の概要は、車載したビデオカメラおよび近赤外カメラで対象樹木を撮影し、このデータからブロック化した植生指標を算出し、その変化を分析することで樹木の状態を判別する。劣化が懸念される樹木に対しては、従来どおり専門家が詳細点検することで安全性は保証される。明らかに健全である樹木を本提案手法によりスクリーニングすることで、樹木点検が効率的になることを目指している。 本研究の成果として、健全な樹木を強制的に生育不良にして、その過程を近赤外カメラで撮影を行った結果、劣化の過程を確認することができた。手法として鉢植えのコニファー木を数本用意し、強制的に劣化させ、その推移を健全な木と比較し、劣化の推移と近赤外反射率の関係を把握した。この結果、人間では劣化が判別できない段階において近赤外データでは劣化を捉えることができることを確認した。次に大学キャンパスの森林区域にある間伐木に対して、同様に強制的に劣化させ、その推移をデータにした。さらに、道路管理者と共同で側道に生育している樹木を定期的に観測して、データの蓄積を行った。
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