研究実績の概要 |
2020年度は,1)キトサン誘導体の作成,2)低分子キトサンおよびキトサン誘導体を用いたL-乳酸菌(Bacillus coagulans)に対する抗菌活性試験,3)キトサンを用いたL-乳酸発酵の実施,を行った.1)では,市販キトサンに対してN-メチル化を行い,N, N, N-トリメチルキトサンを作成した. 2)では,ア)低分子キトサンの作成,イ)抗菌活性試験を行った.低分子キトサンは,市販キトサンをキトサナーゼにより加水分解(40℃,2,3時間)し,限外ろ過にて分画されたものを用意した(3~5 kDa,5~10 kDa,10~20 kDa,20~50 kDa).抗菌活性試験では,各低分子キトサンと先のN, N, N-トリメチルキトサンがそれぞれ1%含まれるLB培地を用意し,LB培地で2日間前培養されたB. coagulansを植菌した.24時間ごとにATP濃度を測定することで抗菌活性を評価した.ATP濃度の経日変化の結果,N, N, N-トリメチルキトサンを用いた実験系では増殖を確認できず,一方で低分子キトサンを用いた実験系では増殖が確認できた.結論として,B. coalugansに対して少なくとも低分子キトサンは抗菌性を有さないことが確認できた. 3)では,ア)低分子キトサンを用いたL-乳酸発酵,イ)B. coagunalsに包括固定化を施した低分子キトサンを用いたL-乳酸発酵を実施した.50 mLチューブに糖液10 mLを加え,B. coagulansを植菌した.24時間ごとにpHを測定し,pHが6.5となるまで2%低分子キトサン溶液を添加して培養を継続した.最初に低分子キトサン溶液を添加した24時間以降,L-乳酸濃度の増加が観察されなかった.目視から菌体が凝集しており,菌体などの分散性に問題があると判断した.菌体の分散性を進める目的で,B. coagulansの包括固定化を行い,同様の培養を行った.その結果,120時間にわたって継続してL-乳酸の生成が確認された.結論として,B. coalugansの分散性を確保することで,低分子キトサンを用いたL-乳酸発酵を実施することができた.
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