研究課題/領域番号 |
19K04677
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
平田 修 福岡大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00461509)
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研究分担者 |
鈴木 慎也 福岡大学, 工学部, 准教授 (00341412)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 廃棄物安定化 / 埋立廃止基準 / 微生物学的評価手法 / 埋立跡地利用 / 準好気性埋立構造 / 好気性微生物 / 嫌気性微生物 |
研究実績の概要 |
我国の最終処分場は埋立廃止が決定されると維持管理を終了する事ができる。しかし、埋立地の廃止基準は現行の施設の改変がない状況で周辺環境への汚染リスクがないことを担保するための指標であり、埋立層内の廃棄物の安定化を表している指標でない。本研究では埋立地の廃止基準を満たした埋立廃棄物の微生物学的安定性をBMP(Biochemical Methane Potential Test)試験、RA(Respiration Activity Test)試験、BIOLOG試験により測定し、その結果を埋立地廃止の判断基準と比較・検討する。 本年度は、好気性微生物の呼吸活性による酸素消費量を測定するRA試験と、昨年度から継続して分析している嫌気性微生物によるメタンの発生能を測定するBMP試験の結果を比較して評価を行った。対象廃棄物は、本研究室で長期間管理している大型埋立実験槽(好気性、準好気性、嫌気性)から10年以上経過した廃棄物に対しRA試験を行った。RA試験とは廃棄物等の微生物分解に伴い消費され発生する二酸化炭素量を基に、検体中の易分解性有機炭素量(mgC/g-dry)が分析可能な手法である。この試験により易分解性有機物中の炭素量を分析し、BMP試験による最大メタン発生量の結果と比較・検討を行った。 対象廃棄物の残存炭素量に対し、BMP試験では好気性で0%、準好気性で8~25%、嫌気性で8~97%が易分解性炭素量として検出されたのに対し、RA試験では好気性で1.5~3.2%、準好気性で2.2~10.6%、嫌気性で2.2~6.0%が易分解性炭素量として検出され、BMP試験では検出されなかった好気性に対しても易分解性炭素が確認された。これは、好気性・準好気性の埋立廃棄物に対して安定化を評価する手法としてはBMP試験よりも有効である可能性が示唆された。今後は溶出試験等と比較してその妥当性を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、好気性微生物の呼吸活性による有機系廃棄物の安定化評価をRA試験と微生物の基質利用特性を用いるBIOLOG試験を行い、対象廃棄物の安定化評価としての検討を行う予定であった。しかし、昨年度から行っているBMP試験の長期的な調査結果と、RA試験の結果との比較を行い、RA試験の妥当性を評価する事が先決と考え、本年度はBIOLOG試験を行わずBMP試験との比較を行った。研究計画としては、本年度中にBIOLOG試験を行う予定であったので、進捗状況としては遅れている。しかし、RA試験の妥当性を評価した事は研究計画の大筋と変わりはない。来年度はBIOLOG試験を行い、さらに溶出試験を用いた安定化評価を行う事で評価手法としての確立を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、2020年度はBIOLOG試験を早急に行い、微生物の基質利用特性から、対象廃棄物中にある有機物の基質特性を把握し、微生物学的な安定化評価を行う。廃棄物の安定化度を明確にするため、対象試料のサンプリング時における浸出水水質、発生ガス状況、内部温度などを測定し、既存の埋立廃止基準項目との比較を行う。さらに、対象廃棄物の含水率、強熱減量などの物理特性に加え、溶出試験(環境省告示13号)を行い、その検水の水質分析を行う。これらの結果を踏まえて、対象廃棄物の安定化度を明確にする。 これらの結果をRA試験、BMP試験等の結果と比較し、微生物学的安定化指標の判断手法として、その妥当性を検討する。2021年度は研究計画に従い調査を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、分析調査する予定であったBIOLOG試験の代わりに、RA試験とBMP試験の比較を行った。そのため、分析に必要な消耗品等に変更が生じた。それにより研究計画の使用額が異なり13000円程度余る結果となった。これは次年度の消耗品として使用する。
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