研究課題/領域番号 |
19K04677
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
平田 修 福岡大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00461509)
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研究分担者 |
鈴木 慎也 福岡大学, 工学部, 准教授 (00341412)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 廃棄物安定化 / 埋立廃止基準 / 微生物学的手法 / 埋立ガス / 準好気性埋立構造 |
研究実績の概要 |
我国の最終処分場は埋立廃止が決定されると維持管理を終了する事ができる。しかし、埋立地の廃止基準は現行の施設の改変がない状況で周辺環境への汚染リスクがないことを担保するための指標であり、埋立層内の廃棄物の安定化を表している指標でない。本研究では埋立地の廃止基準を満たした埋立廃棄物の微生物学的安定性をBMP(Biochemical Methane Potential Test)試験等を用いて埋立地廃止の判断基準と比較・検討する。また、本年度は埋立地廃止の判断基準である実処分場のガス発生量の調査方法の確立を目的とし、同じ埋立区画に設置されたガス抜き管とボーリング孔におけるガス流量と埋立ガス濃度の実測データを基にガス調査手法の確立に関する検討を行った。 昨年度の調査結果を基に対象廃棄物の溶出試験を行い、廃棄物中のどの成分が埋立廃棄物の微生物学的な安定化に最も寄与するのか検討を行った。その結果、溶出液中のDOC(溶解性の有機炭素)成分がBMP試験等の結果を反映する結果となった。このように、埋立地の安定化評価には、生物学的評価手法で埋立廃棄物の分解状況が把握でき、安定化評価の重要な情報となる事が明らかとなった。また、現状で用いられている埋立地廃止のための基準省令における埋立ガスの発生量の分析手法は、その詳細が確定していない事から廃止が困難な処分場が報告されている。そこで、同じ埋立区画内に設置してあるボーリング孔とガス抜き管を用いたガス測定結果の比較を行った。その結果、ボーリング孔から発生するガス量は外気温や調査時の大気圧などの気象条件等の外的な影響を受けにくいため、ガス抜き管に比べてガス濃度や発生量が異なる傾向を示す事が明らかとなった。今後は、実埋立地における最適なガス調査方法の検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度の調査結果を基に、BIOLOG試験と溶出試験を用いた安定化評価を行う事で評価手法としての確立を目指す予定であった。しかし、溶出試験を行った結果、BMP試験やRA試験が、安定化評価として妥当であると考え、BIOLOG試験を行う必要性が少なくなったと判断した。そこで、研究計画で2021年度に行う予定であった実処分場での調査を開始した。安定化評価の検討を受け、焼却残渣が主体で埋立てられている実処分場から発生する埋立ガスに着目し、廃止基準におけるその発生量の分析手法の検討を行った。このように、調査内容の修正があったが、当初の研究計画に準じて行われており、進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究内容としては、実処分場におけるガス測定手法の詳細な検討を中心に行う。ガス測定の分析時間や手法の詳細を検討するために、具体的にはボーリング孔における事前のガス置換や分析時間の違いにおける発生量の挙動、さらに孔内水とガス発生量の比較などを行い、埋立廃棄物の微生物学的な安定化状況がガスの発生状況に反映しているかを明らかにする。当初の研究計画で実埋立地でのボーリング調査を行い焼却残渣を採取して微生物学的評価手法による評価を行う予定であったが、昨年度の調査結果を踏まえて、焼却残渣主体の実処分場における発生ガス量の調査手法の検討に切り替えて検討を行う。全ての調査結果を踏まえ、最終的には微生物学的安定化指標を基にした、埋立廃止のための最適な廃止評価手法の提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響と実験内容の変更に伴い、実験や調査に用いる消耗品等に変更が生じた。それにより研究計画の使用額が異なる結果となった。これは次年度の消耗品として使用する。
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