本研究は埋立廃棄物の微生物学的安定性をBMP(Biochemical Methane Potential Test)試験等の微生物を用いた試験により測定し、その結果を埋立地の廃止判断基準項目と比較・検討し、微生物学的手法の有用性を確認する事を最終的な目的としている。初年度と2年目においてBMP試験とRA(Respiration Activity Test)試験を行い、埋立構造の異なる大型実験槽内の廃棄物を評価した。その結果、BMP試験では検出されなかった好気性埋立実験槽の廃棄物に対してRA試験では易分解炭素の存在が確認され、RA試験が廃棄物の埋立環境の違いに幅広く対応し安定化を評価する手法として有効である可能性が示唆された。 埋立地の廃止基準では、廃棄物の微生物分解により発生した分解ガスの発生量や組成を埋立ガスが集積するガス抜き管で測定し実埋立地の内部評価を行う。最終年度では、実埋立地から発生する埋立ガスを調査し、埋立地内部の微生物学的な安定化状況の把握を行った。今回は埋立廃棄物が残渣物主体である埋立地を対象としており、ガス抜き管やボーリング孔から発生するガスを測定し、その経時変化から対象区画における廃棄物の安定化状況の把握を行った。最終年度の調査結果から、①通常ガス抜き管から埋立地内で発生したガスの9割以上が流出しており、ガス抜き管の機能が十分に発揮、②浸出水削減対策による埋立区画のアスファルト舗装で埋立地表面でのメタン酸化が阻害されている可能性、が明らかとなった。以上の事から、対象区画の埋立廃棄物は、現状では安定化しておらず廃止基準が適合するに至っていない事が判った。 本研究で、RA試験のような微生物学的手法を用いて埋立廃棄物の安定化評価を行う事は可能であるが、実埋立地に適応する際には埋立ガスを正確に測定する事で廃棄物の安定化を評価する事が可能であると考える。
|