研究課題/領域番号 |
19K04682
|
研究機関 | 福岡県保健環境研究所 |
研究代表者 |
平川 周作 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (90527623)
|
研究分担者 |
中島 淳 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (40584074)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 環境DNA / 純淡水魚 / 次世代シーケンサー / メタバーコーディング |
研究実績の概要 |
本研究では、環境DNAを用いた九州地方の純淡水魚及び外来魚の調査手法を確立し、高解像度・時系列データの獲得による短期的な魚類多様性の変動を明らかにすることを目的としている。環境DNA調査は、DNA配列で生物種を同定するため形態に関する専門的知識は不要であり、少量の採水のみで解析可能であるため特殊な技術がなくても調査を実施できるという利点がある。しかし、照合するDNA配列が不明なため種同定できない、環境DNAの調査方法が定まっていないといった課題がある。そこで、①九州地方の純淡水魚及び外来魚を網羅したDNAデータベースを構築、②生息魚類の取りこぼしがない環境DNAの採取・解析条件を確立し、③多地点・季節別調査による高解像度の時系列データをもとに魚類多様性変動の傾向を明らかにするため、研究を展開している。 令和元年度は、環境DNAメタバーコーディング解析に用いるDNAデータベースを構築するため、九州地方に生息する純淡水魚全42種について12S rRNA領域のDNA配列を解読した。なお、試料は形態により同定した標本から遺伝子解析用に一部採取したものを用いた。本体はホルマリン固定標本としており、本研究では標本にトレーサブルなDNA配列としてデータベースの整備を進めている。また、生息魚類の取りこぼしがない環境DNA試料の採取方法を検討するため、採捕調査を実施した矢部川水系2河川と筑後川水系1河川の3地点における瀬と淵の試料をそれぞれ採水し、環境DNA解析を実施した。解析の結果、瀬と淵の検出種は完全に一致することはなく、どちらか一方だと検出される魚種を取りこぼす可能性が示唆された。また、採捕調査と環境DNA調査の結果を比較したところ、底生魚は環境DNAで検出されにくい傾向にあった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初は、既存DNAデータベースに未登録の魚種についてDNA配列を解読し、データベースの拡充を図る予定であった。しかし、同一種でも地域集団によるDNA配列の違いがある可能性を考慮し、九州地方で採捕した個体を用いて12S rRNAの配列解析をおこない、令和元年度中に九州地方の純淡水魚全42種の情報を取得することができた。外来魚については、手元に標本が無い種の採捕を実施し、純淡水魚と同様にデータベース構築にむけた試料の準備を進めている。また、採捕調査と同時に実施した瀬と淵の環境DNA調査の結果を比較することにより、環境DNA試料の採取方法について検討することができた。検討結果を踏まえた対応策とその検証は、令和2年度以降に実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
12S rRNA領域のDNA配列解析の結果、近縁種の配列の相同性が高く、種ごとの分類が困難と考えられるものが存在した。そのため、種を分けて検出が可能な手法の構築を目的として、地域集団レベルの系統解析に用いられることが多いチトクロームb領域のDNA配列情報を解読し、12S rRNA領域とあわせてDNAデータベースの拡充を試みる。また、福岡県に侵入する恐れのある外来魚についてもDNA配列解析に着手する。あわせて、環境DNA調査に係る令和元年度の検討結果を踏まえた対応策の実施と検証をおこなった後、山系を境に区分される福岡県内の異なる地域の代表河川について、1河川につき複数地点 (高解像度) の季節別 (時系列) 環境DNA調査データの取得を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)環境DNA解析に用いるPCR装置の購入に係る備品費を当初予定額より抑えることができた。そのため、助成金の一部を次年度の研究費使用分として繰り越した。 (使用計画)サンプリング用資材の購入及び研究成果を学会等で発表するための旅費や論文として投稿する際の費用に使用する計画である。
|