研究課題/領域番号 |
19K04691
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
佐藤 嘉昭 大分大学, 理工学部, 客員教授 (30038111)
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研究分担者 |
秋吉 善忠 大分大学, 理工学部, 助教 (40713467)
大谷 俊浩 大分大学, 理工学部, 教授 (00315318)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 加熱改質フライアッシュ(MFA) / 断面修復材 / 基準モルタル / MFAモルタル / ポリマーセメントモルタル / 材料設計法 / 強度・耐久性 |
研究実績の概要 |
昨年度に実施した加熱改質フライアッシュ(Modified Fly Ash, MFA)を混和したポリマーセメントモルタル断面修復材の配(調)合設計に関する実験のうち,MFAを混和していない基準モルタルのデータ並びにMFAモルタルの実験データを詳細に解析するとともに,ポリマーを混和した新しいシリーズの実験に着手した。得られた結果の概要は下記のとおりである。 (1)基準モルタルに及ぼす影響要因として,水セメント比,細骨材種類および容積率(Vs),MFA置換率,ならびに収縮低減剤添加率に着目し,それらがモルタルのフレッシュ性状,圧縮および曲げ強度の発現性,乾燥収縮ひずみの進展,硫酸侵食抵抗性に及ぼす影響について実験的に検討を行った。さらに,得られたデータを用いて,強度と収縮ひずみの予測式の構築を試みた。 (2)基準およびMFAモルタルの材齢28日までの圧縮強度は,セメント水比,Vsおよび材齢の進行を表す関数の積で表した予測式でおおよそ推定可能である。基準およびMFAモルタルの収縮ひずみは, MFA容積率に有効係数α(0.72)を乗じた容積を足し合わせた等価細骨材容積率を用いた予測式で推定可能である。硫酸浸漬試験における中性化深さは,MFA置換率20%では無混和と差がないが,置換率40~60%の範囲では小さくなる傾向にある。また,珪砂ではVsによる影響は明確ではないが,高炉スラグ細骨材ではVsが大きいほど耐硫酸性が向上する。 (3)JIS規格(JISⅡ種相当)の範疇にあるMFAの品質変動について当初の研究計画には含まれていなかったが,使用するMFAの品質はMFAモルタルの特性に影響を及ぼすことは明らかで,現状のMFAの品質についてデータを収集した。その結果,一定の品質のMFAが安定的に供給されていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1)所要の要求性能を満たすMFAを混和したポリマーセメント系モルタル補修材に対する材料設計法を確立することが本研究の目的で,さらに,実構造物に対して適用した場合の具体的な効果についてもデータを収集し,補修材としての評価を確認することを最終のゴールとしている。 (2)これを実現するために,時間はかかることになるが,先ず,MFAを混和していない基準モルタルについて,フロー値や空気量などのフレッシュ性状や硬化性状として曲げ強度と圧縮強度の発現性や乾燥収縮ひずみの進展具合,そして,耐久性として硫酸浸漬に対する抵抗性,など補修材としての基本的な物性を明らかにするための実験を行った。 (3)次いで,基準モルタルの特性を詳細に分析した上で,MFAを混和したMFAモルタルの特性に関する実験を実施した。試行錯誤的な面はあるが,実験の都度,結果を分析しながら課題を抽出し,それを次のシリーズの実験で解決するようにした。現在,MFAモルタルに関してほぼ材料設計を行うことができる状態まで達している。 (4)現状,残された課題としては,フレッシュ性状における作業性の確認(コテ仕上げのしやすさやダレ防止などチキソトロピーの評価)や基盤コンクリートとの接着性に関して付着強度に関する実験データを収集する必要がある。また,補修個所でのひび割れの発生は再補修という補修材にとっては致命的な欠陥になる可能性があることから,ひび割れの発生に関する実験も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)当初の研究計画よりも実験量が膨大になったこと(現在,シリーズⅩまで実施)やコロナ禍で実験を行えるような環境が整わなかったこともあって,今年度中に最終のゴールにたどり着くのは難しい状況となっている。 (2)基準モルタルの特性を基にMFAモルタルの特性を予測し,さらに,MFAを混和したポリマーセメントモルタルの特性を設計段階で予測できるようなシステムを確立するためには,それぞれの段階で,それまでに得られた実験結果を踏まえた綿密な実験計画の元での実験を行う必要がある。繰り返し実験を行わなければならない項目も含まれているが,今年度が最終年度であることから,少なくとも,文献調査も含めてポリマーセメントモルタルの物性を明らかにすること,そして,MFA混和した場合のポリマーセメントモルタルの強度発現性を基準モルタルとMFAモルタル,そしてポリマーモルタルの結果を基に予測することに取り組むことにする。 (3)前年度末に実施した実験(シリーズⅩ)の結果が出揃ってきているので(収縮ひずみ試験や耐硫酸性試験の結果を得るまでにモルタル打設から2ヶ月程度の時間が必要),この結果を踏まえて最後のシリーズの実験を計画する予定にしている。 (4)【現在までの進捗状況】で挙げた課題については,次年度以降も取り組むことにする。また,本研究で提案する材料設計法の妥当性を判断するためには,すなわち,そのようにして実施した材料設計が実用に耐えうるかどうかの確認が必要となるが,MFA混和したポリマーセメント系モルタルを断面修復材として使用した場合の具体的な評価については次年度以降に引き続き実験を行うことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の購入で端数が出たため。 2021年度の予算と併用して物品費に使用する。
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