研究課題/領域番号 |
19K04692
|
研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
中治 弘行 公立鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (80314095)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 土塗り小壁 / 分割 / 復元力 / 荒壁 / 中塗り / せん断力 |
研究実績の概要 |
本研究では、伝統的構法木造建物の耐震性能評価法を改善するため、束や横架材で分割された土塗り小壁付木造軸組を対象にした実大実験を行い、土壁部分の「サイズ」すなわち「縦横比」をパラメータとした復元力特性評価方法の妥当性を明らかにすることを目的とした。 令和2年度の実施状況は以下のとおりである。束で分割された土塗り小壁付木造軸組の復元力特性と破壊性状、ならびに理論式との整合性を明らかにするため、昨年度に準備した試験体3体のうち2体について、令和2年10月16日から12月4日にかけて感染対策に万全を期しつつ、3P土塗り垂れ壁付木造軸組、2P全面土塗り壁の高さ方向の中間に横架材を設けて上下に2分割した試験体について面内せん断加力実験を実施した。 事前に行った理論的な復元力特性推定に比べて、実験結果は復元力がかなり小さいものとなった。損傷状況を考慮すると、荒壁層と中塗り層の間での壁土の大きな剥離が顕著であったため、理論的な推定で仮定されている中塗り仕上げまでが一体となったせん断抵抗ではなく、ほぼ荒壁層のみのせん断抵抗だった可能性が考えられる。この内容は、令和3年度の日本建築学会大会に「束または水平材で分割された土塗り小壁の復元力特性に関する実大実験と理論的検討」として発表予定である(梗概集へ投稿済)。今後も、新型コロナウィルスの感染防止を心掛けながら残る1P全面土塗り壁の高さ方向の中間に横架材を設けて上下に2分割した試験体の実験を進め、束等で分割された個々の土壁部分の復元力がどのように構面全体の復元力に影響するのか、検証していく。新たな実験を行うには今年度も状況が厳しいため、実験に用いる計測ソフトのバージョンアップ等実験環境の整備にも努めたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から2年度にかけて3~4体の試験体について実大実験を行う計画であったが、新型コロナの影響もあり、初年度に準備した3体のうち2体の実験をようやく終えたところである。3体目の実験が残っているので、最終年度にはこの実験を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度には新たな実験を追加で行うことはせず、残っている1体の試験体の実験を行うのみとする。学生の登校が制限されている期間に、研究助成の応募時に予定していた実験に用いる計測ソフト(現在はサポートが切れたWindows Vistaで稼働しているが10年を経過しており新規に環境を再構築することが不可能であるため、少なくともWindows 10への対応が必須である)等実験環境のバージョンアップや改修に注力することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
チリで開催予定のWCTE 2020に参加予定であったが、新型コロナの影響で参加を見合わせた他、新規の実験用試験体の製作を断念して、2年度後半に実験環境の整備を優先することとした。最終年度には残る1つの実験にかかる経費(実験補助者への謝金等)の他、計測ソフトのバージョンアップ等に重点的に予算を執行する予定である。
|