本研究では、伝統的構法木造建物の耐震性能評価法を改善するため、束や横架材で分割された土塗り小壁付木造軸組を対象にした実大実験を行い、土壁部分の「サイズ」すなわち「縦横比」をパラメータとした復元力特性評価方法の妥当性を明らかにすることを目的とした。
令和3年度実施状況は以下のとおりである。実験システム改修の一部として、これまでWindows Vistaで動作していた計測システムを更新し、これまでと同様に実験データの収録が行える仕様でWindows 11対応とした。また、本研究に必要な他の木質材料でできた耐震要素の要素実験を行えるよう、既設の加力装置に追加設置できる鉄骨製治具も増設した。前年度までの実験結果をふまえ、本研究を補足するため、理論的な復元力特性推定に用いられる土壁自身の復元力Qwを実験的に確認できないかと考え、軸組の仕口によるモーメント抵抗の影響をできるだけ排除した土壁単体の面内せん断加力実験を試みた。長ほぞ差し込栓打ちの柱仕口を改良してピン仕口に近づけた試験体を作製してこれまでと同様の面内せん断加力実験を行った結果、実験結果は計算結果を少し上回ること、土壁部分のサイズによっては貫等下地の影響が無視できないこと等が明らかになった。この内容は、令和4年度の日本建築学会大会に「軸組の影響を排除した土壁パネルの復元力特性に関する実大実験」として発表予定である(梗概集へ投稿済、謝辞記載忘れ)。また、更新した計測システムは概ね順調に動作することが確認できた。
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