研究実績の概要 |
研究計画当初は鉄筋コンクリート造部材の試験体を製作し, 実験を行う予定でいたが, 「現在までの進捗状況」で後述するように, 鉄筋の切断に関する技術的な問題が発覚したためにコンクリート供試体の一軸圧縮試験に変更して画像相関法による測定の制度チェックを行った。 角柱コンクリート供試体を製作し, 実験変数はコンクリート強度及び供試体高さとした。慣用のひずみゲージによって計測されたひずみと画像相関法によって計測したひずみの比較を行い, 画像相関法によって信用に値するひずみが計測できることを確認した。また, 高さが大きい供試体では, 破壊が進行する際にひずみが急激に上昇する領域と, そうでない領域に分かれるが, そのどちらにおいてもひずみゲージおよび画像相関法によって計測したひずみが良好に対応していた。ひずみゲージを張り付けた位置でコンクリートの破壊が起こると, ひずみゲージがコンクリートからはがれるため, ひずみゲージによる測定はできなくなる。これに対して画像相関法を用いたひずみの計測は非接触で行われるため, ある程度破壊が進行してもひずみの計測が可能であったと考えられる。 慣用のひずみゲージでは, ひずみゲージの長さ(今回使用したものは60 mm)に対して, その区間での平均ひずみが得られるが, 画像相関法を用いて計測したひずみは, この60 mm区間の間でもひずみ度が異なっていることを示していた。画像相関法を用いることによって, ひずみゲージでは測定することができない局所的なひずみを計測できる可能性も確認できた。 この実験を通じて, 画像相関法でひずみを計測するうえで必要な試験体と撮影用カメラの間の距離なども確認できたため, 次年度行う実験の試験体の寸法などを決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時には鉄筋コンクリート造の試験体で実験を計画していたが, 鉄筋を切断する作業において想定通りに作業することができないことが判明し, コンクリートのみでの実験に変更した。 画像相関法を用いたひずみ計測の実施とその制度の検証という目的は達成することができたが, 鉄筋コンクリート造試験体での実施はできていない。 しかし, 鉄筋の切断に関する技術的問題自体は解消することができたため, 次年度には予定通りの実験を行う上での技術的な問題は現時点では無い。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に測定精度を確認した画像相関法を用いて, 鉄筋コンクリート造試験体の引張試験を行う。初年度の結果から, 試験体の形状や大きさはすでに決定済みである。 今年度は試験体を製作し, 実験を実施するために必要な治具の設計および製作を進めていき, 実験を行う。実験変数は, 使用する鉄筋径であり, 2体の試験体を実験予定である。 次年度には, 鉄筋の節形状を実験変数とした実験を行い, 鉄筋とコンクリートの間でどのように応力伝達が行われていくのか, その結果としてひび割れ間隔を推定する手法を提案することを試みる。
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