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2020 年度 実施状況報告書

脆性破壊の予測手法に基づく梁端溶接部の接合部詳細の最適化-接合部の品質管理基準

研究課題

研究課題/領域番号 19K04699
研究機関崇城大学

研究代表者

東 康二  崇城大学, 工学部, 教授 (80320414)

研究分担者 岩下 勉  有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (10332090)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード建築構造・材料 / 鋼構造 / 溶接接合部 / 脆性破壊 / 接合部詳細 / スカラップ
研究実績の概要

本研究は,接合部詳細の中でひずみ集中点となるスカラップ底から進展した延性き裂を起点とする脆性破壊を的確に予測し,より正確に接合部の終局耐力を求めると共に,脆性破壊の発生を抑制する接合部の詳細形状の最適化を図ることを目的とする.
実験的研究では,JASS6で推奨される複合円型およびAISC仕様規定に示される形状をもつ試験体に,正負交番漸増繰返し載荷を行った.鋼材は全てSN490B材とし,フランジとウェブとの接合にはサブマージアーク溶接(SAW)を用いた.試験体のパラメータは,スカラップ形状と後述のフィレット残しの有無として4体製作した.事前実験及び昨年度の結果を踏まえ,ウェブ厚は12mmとした.またスカラップ底がSAWと交差することを考慮し,SAWが低靭性となるよう調整した.JASS6推奨型を持つ試験体では,スカラップ底から延性亀裂が発生し,早期の脆性破壊により破断に到った.また改良型を持つ試験体では,裏当金組立溶接部から発生した延性亀裂を起点として脆性破断したため,形状改良の効果が確認できなかった.AISC型を持つ試験体では,フィレット残しの有無に関わらず,SAW の溶接止端部から延性亀裂が進展すると共に,スカラップ底に延性亀裂が発生し,そこから脆性破断に到った.ただし,フィレット残しを用いた方がはるかに実験装置の載荷限界に近い高い塑性変形能力を示し,改めてフィレット残しの効果が実証された.
解析的研究では,モデル化した試験体のスカラップ底,或いはSAWの溶接止端部に沿った方向に貫通切欠きを設け,脆性破壊の発生を予測した.切欠き位置は解析の相当塑性ひずみ分布図から一様伸び以上となる最大点とした.応力三軸度と高応力領域の分布形状に基づく比較から,スカラップ形状の改良により,塑性拘束が抑えられると共に切欠き先端のひずみ集中が抑えられ,終局耐力の予測値が最大となることが分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画では,スカラップ底から進展した延性き裂を起因とする脆性破壊について,スカラップの形状・寸法と延性き裂進展量の関係を調べるために,鋼構造柱梁接合部をモデル化した試験体を用いて,正負交番漸増繰返し載荷を行い,延性き裂の発生・進展と脆性破壊への転化を再現することで,それぞれの塑性変形性能を検証することとしていた.
特に本年度は,事前実験および昨年度の研究結果を踏まえ,接合部係数が指針の推奨値となるウェブ厚(12mm)とした上で,スカラップ形状(JASS6で推奨されている形状,米国基準AISC-341で規定される形状)とフィレット残しの有無をパラメータとして,改良型試験体を製作,実験を行うと共に,有限要素モデルによる解析を行った.更にSAW靭性が破壊にもたらす影響を検討するため,敢えて低靭性SAWを意図的に組み込んだ.
実験により,JASS6型とすることは塑性変形性能の改善とはならないことが明確となり,形状の変更だけではなくフィレット残しと組み合わせることにより,低靭性SAWだとしても,塑性変形性能の向上が明らかとなった.また解析により,スカラップ形状の改良とフィレット残しを組み合わせることにより,塑性拘束が抑えられると共に切欠き先端のひずみ集中が抑えられることが明らかとなった.
以上から,接合部詳細の改良により,低靭性SAWおよび接合部のウェブ負担率が高くても高い塑性変形能力を確保できることが明らかとなったことから,上記の区分とした.

今後の研究の推進方策

研究計画では,モデル化試験体による破壊実験を継続しながら,実大実験による検証を行うこととなっている.予備実験から本年度までの実験を通して,フランジとウェブの耐力比が塑性変形性能に影響を及ぼすことが確認できたた共に,破壊経路をSAWの溶接止端部に沿ったき裂進展の方に持たせることにより,高い塑性変形能力を確保できることが明らかとなったが,SAWのサイズによっては,スカラップ底と上記の位置が交差することになり,その場合,スカラップ底からの破断に到る場合が見られたことから,まず,SAWのサイズをパラメータとして,適正な寸法を検討する.SAWのサイズはウェブ寸法によることから,SAWの基準寸法を基に,どの程度ばらつきが認められるかを解析モデルで検討する.既にスカラップ底のひずみ集中を緩和し,延性亀裂の発生進展位置をウェブ側に移動させる形状を立案しており,それに,適正なSAWサイズを組み合わせたモデル化試験体を製作し,実証実験を行い,その結果を踏まえて実大試験体を製作する.
また,本年度の課題の一つであるウェブ上のせん断力が卓越した状況での延性亀裂の進展について,その破壊メカニズムを表現できるパラメータの検討を継続する.材料定数の決定のための材料試験(靭性試験)の結果を基に,亀裂長さの影響を受けないとされる限界Weibull応力による脆性破壊発生予測とモードⅡ破壊を表現するパラメータを組み合わせることにより,スカラップのひずみ集中点からのき裂の発生と脆性破壊を予測できれば,最大の塑性変形能力をもつものとして最適な形状が決定できると考えている.

次年度使用額が生じた理由

(理由)引張試験片の製作および実験にかかる消耗品の費用に端数が生じたため.

(使用計画)引張試験片の製作および実験にかかる消耗品の費用に補填する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 溶接欠陥から発生する脆性破壊のワイブル応力による予測2020

    • 著者名/発表者名
      濵﨑 瑞生,岩下 勉,東 康二
    • 雑誌名

      鋼構造年次論文報告集

      巻: 28 ページ: 460-468

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 破壊靱性の異なる鋼試験片の切欠きから発生する脆性破壊予測2020

    • 著者名/発表者名
      岩下 勉,東 康二
    • 雑誌名

      鋼構造年次論文報告集

      巻: 28 ページ: 974-981

    • 査読あり
  • [学会発表] 溶接始終端部の欠陥から発生する脆性破壊の予測に関する研究 繰返し載荷を受ける試験体の塑性変形能力推定2021

    • 著者名/発表者名
      濵﨑 瑞生,岩下 勉,東 康二
    • 学会等名
      日本建築学会
  • [学会発表] 繰返し負荷を受ける切欠きを有する鋼試験片の脆性破壊に関する研究 温度変化による破壊靱性の違いが脆性破壊に及ぼす影響2021

    • 著者名/発表者名
      田島 やよい,岩下 勉,東 康二
    • 学会等名
      日本建築学会
  • [学会発表] 繰返し載荷を受ける切欠きを有する鋼試験片の塑性変形能力に関する研究 その6 破壊靱性および試験温度の違いによる検討2020

    • 著者名/発表者名
      岩下 勉,東 康二
    • 学会等名
      日本建築学会

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公開日: 2021-12-27  

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