研究課題/領域番号 |
19K04700
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
酒句 教明 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00435273)
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研究分担者 |
平出 務 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (40370704)
下村 修一 日本大学, 生産工学部, 准教授 (50443726)
仲村 成貴 日本大学, 理工学部, 教授 (80328690)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スウェーデン式サウンディング試験 / 宅地地盤 / 土質分類 / 液状化強度 / 常時微動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,宅地地盤の調査について現状に合わせた低コストと最低限必要な評価精度のバランスをもつ調査システムの開発である。宅地地盤の調査はスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)が主流となっているが,現状は同試験結果から土質分類ができないことや液状化予測が直接できないことが課題となっている。今年度は①土質分類を可能とするスウェーデン式サウンディング試験の実用化②SWS試験から直接液状化リスクを予測する方法③常時微動を用いた盛土・埋土の不整形の検出,の3つの検討を実施した。 ①については,5つのフィールドを対象に調査を実施した。現在までに室内の検討により摩擦音の大きさと細粒分含有率の関係から,一定の精度を有した土質分類が可能であることを示してきた。本検討ではさらにデータ整理の段階で工夫を加えSN比の向上を図ることができ,かなりの土質分類精度を高めることができた。5つのフィールド調査研究の結果は,調査孔の不備のあった一つを除き,別途実施されたボーリング調査(土のサンプリングおよび室内土質試験)との比較から,かなりの確度で予測ができることが確認できた。 ②については,ここで提案する予測方法は従来の方法を基本としているが,SWS試験データと液状化強度の関係を別途求める必要がある。①と同様にボーリング調査により予め土質に関する情報および液状化強度試験が実施されているフィールドを対象にSWS試験を実施し,また,既往の文献に示されたデータを合わせてSWS試験データと液状化強度の関係をまとめた。その結果,従来検討してきた室内試験によるきれいな砂と調和的な関係を示すことが分かった。 ③については,地盤情報が多く得られている複数の表層が盛土・埋土のフィールドを対象に常時微動を実施した。現段階では,地震観測およびPS検層から求めた地盤の卓越周期と良い対応を示す結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,宅地の地盤調査の現状を踏まえSWS試験から直接土質分類および液状化予測を可能にすることである。そのためには,(1)SWS試験中に得られるデータから簡易に土質分類が可能になること,(2)SWS試験データであるNsw値から直接液状化強度を評価できること,(3)現在宅地地盤の調査として主流であるSWS試験以外に,第二の調査方法として主流となり得る常時微動の活用方法の活路を開くことである。 (1)については,従来のSWS試験にマイクを取り付け摩擦音をサンプリングし,土質分類を試みる取り組みである。今年度の成果では,実際に現場で使用されている自動SWS試験機にマイク内蔵型のスクリューポイントを用いて,フィールド調査により検討した結果,十分に精度を有した土質分類が可能であることを示すことができた。以上は初年度計画通りの進捗である。 (2)については,フィールド調査から直接得られたデータおよび文献からのデータにより,SWS試験データと液状化強度の関係を求めた。その結果,試験条件の明確な室内による検討結果と調和的な関係であることが確認できた。このことは,本研究の成果として示したSWS試験データと液状化強度の関係の信頼性が高いということを意味している。以上は,初年度計画通りの進捗である。しかしながら,当初の予定であった室内での細粒分を含む土の検討については,試験結果の一部が思わしくなく,現在追加試験の進行中である。 (3)については,表層が盛土・埋土のフィールドを対象に複数の常時微動の結果を検討した結果,地震観測およびPS検層と比較的良い対応を示すことが確認され,従来の知見と同様の結果を得た。本検討は初年度計画通りの進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策は以下の通りである。 ①土質分類を可能とするスウェーデン式サウンディング試験の実用化について:摩擦音を利用したSWS試験について,4つのフィールド調査結果からは十分に精度の高い土質分類が可能であることが示された。今後はさらにフィールド調査のデータを増やして評価精度の確認を実施する予定である。電気比抵抗を利用したSWS試験については,試験機のリニューアルを検討しており今後は新たな試験システムで検討する予定である。 ②SWS試験から直接液状化リスクを予測する方法について:現在までに室内の試験によるきれいな砂およびフィールド調査による原位置の土を対象にしたSWS試験データと液状化強度の関係を求めた。今後は,細粒分を含む土を対象とした室内による検討を実施し,定量的な評価を可能にすることが必要となる。具体的には,加圧せん断土槽および三軸試験による検討である。細粒分を用いた土を対象にした室内試験は過去にもトライした研究報告があるので,これらを参考に現在も進行中である。さらに,フィールド調査によるデータを強化するためボーリング調査がすでに実施されているサイトを対象にフィールド調査を追加する予定である。 ③常時微動を用いた盛土・埋土の不整形の検出について:本研究で使用した常時微動の測定システムは,既往の研究成果との比較から,特に問題なくデータの信頼性も確認できた。今後は,表層が不整形の盛土・埋土のフィールドを対象に常時微動を実施し,成層の場合と比べ差異を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施した細粒分を含む土の液状化強度について三軸試験を実施したが,既往の研究報告と一部矛盾した結果が得られた。検討を繰返したが,どちらが事実かの結論を出すに至っていない。そのため,室内試験の関連である多大な労力を要する加圧せん断土槽試験を途中で中止した。その一環で支払う予定であった実験補助の謝金を使用することなく次年度に繰り越した。次年度は,計画の予定通り,加圧せん断土槽試験の謝金に使用する予定である。
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