研究課題/領域番号 |
19K04701
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
荘所 直哉 明石工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (50413810)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 木質構造 / 柱頭柱脚接合部 / 載荷速度 / 引張性能 |
研究実績の概要 |
柱頭柱脚接合部の引張試験の実験計画を構築するに際し、実大振動台実験で測定された最大速度の分析を行った。その結果、瞬間最大速度は約140mm/secであることが分かった。その情報をもとに予備実験を行った。予備試験の載荷速度は140mm/secとその半分の速度の70mm/secで実施した。試験体は柱、土台の中柱型で金物は山形プレートを用いた。部材断面は105mm角とし、材料はスギ製材を用いた。予備試験の結果、破壊性状はともに釘位置での土台の割裂であったが、荷重-変位曲線も曲線を評価した結果にも大きな違いは見られなかった。そのため、本試験の載荷速度は試験機への負荷も考慮して70mm/sec以下で実施することとした。 本試験は接合形式(中柱型・アンカー型の2種)や使用する接合具(釘・ボルト・ラグスクリューの3種)を組み合わせて試験計画を構築した。中柱型の金物は山形プレート(VP)およびかど金物(CPT)とし接合具は釘で木材はスギ製材とし、アンカー型の金物はホールダウン金物(SHD10)とし接合具はボルトとラグスクリューで木材はスギ製材とヒノキ製材とした。載荷速度は予備試験の結果を考慮し、0.75、2、4、6、8、10、15、20、35、50mm/secの10種類とした。それらの組合せで60種類となり、各種類3体の試験を実施した(計180体)。なお、載荷速度0.75mm/secは現状の金物の性能評価試験で行われている載荷速度である。載荷速度を速めた試験結果の比較対象となる試験体である。 本試験の結果、全体的な載荷速度の影響の傾向について以下の知見が得られた。i:載荷速度が速くなると剛性が低下する傾向にあるが、降伏耐力や最大荷重は載荷速度の影響が小さいことが分かった。しかし、最大荷重時変位は小さくなる傾向である。ii:破壊性状は載荷速度に影響しないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画していた載荷速度の調査や分析、その結果を用いた予備試験を計画通りに進めることができた。また、年度内に計画していた柱頭柱脚接合部の引張試験の多くは実施済みである。現場で多く使われている接合具(特にビス系)に関する引張試験は未実施のため、次年度に実施する計画である。実験結果の1次的な整理・分析は実施済みであるが、詳細な分析はまだ完了していないため、次年度に予定している研究内容と合わせて実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
柱頭柱脚接合部の引張試験で使用した接合金物に使用する接合具(釘・ボルト・ラグスクリューボルトなど)の載荷速度の違いによるすべり性能への影響に関する実験を行う。接合部の引張試験よりも基礎的な試験となるが、より本質的なすべり性能を評価できる試験である。載荷速度は接合部試験で採用した速度と一致させて実験を行う予定である。接合具は1本の場合や複数本用いた場合で試験を実施し、複数本の場合は接合具の配置をいくつかのパターン(直列配置や千鳥配置等)で実施する。得られた結果を分析・考察して載荷速度が接合具のすべり性能に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた試験をおおよそ実施できたが、次の2点で使用額が少なくなった。I:試験実施にかかる試験装置の構築や試験体作成のコストを低く抑えることができた、II:年度末に執行予定だった出張がキャンセルになったため旅費の使用額が減ったため、である。 次年度は当初の研究計画で予定されている研究項目を実施するが、今年度に実施した試験結果を整理・分析した結果で生じた試験も追加で実施予定である。また、試験機のクーリングタワーの本体やモーターがやや不安定であるため、場合によってはそれらの改修に執行する可能性もある。
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