熊本地震の被害調査報告より,柱頭柱脚接合部の補強が義務付けられた2000年以降に建設された木質構造住宅でも数棟の倒壊が確認されている。現在適用されている接合部の性能の評価は静的加力実験で行われているが,地震時には高速度で引張力が載荷される。この載荷速度の違いが柱頭柱脚接合部の引張性能に及ぼす影響を実験的に明らかにすることを目的としている。 柱頭柱脚接合部の引張試験の実験計画を構築するに際し、実大振動台実験で測定された最大速度の分析を行った。その分析結果をもとに予備実験を行い、本試験の実験計画を構築した。接合形式を中柱型とアンカー型とし、接合具は釘、ボルト、ラグスクリュー、四角穴付きタッピンねじを用いて実施した。中柱型の金物は山形プレート(VP)、かど金物(CPT)、コーナー金物(CP-ZS)とし、アンカー型の金物はホールダウン金物(S-HD10)とした。母材となる木材は中柱型の試験体は土台と柱ともにスギ製材とし、アンカー型の柱はスギ製材とヒノキ製材の2種類とした(部材断面はいずれも105mm角)。載荷速度は予備試験の結果を考慮し、0.75、2、4、6、8、10、15、20、35、50mm/secの10種類とした。なお、載荷速度0.75mm/secは現状の金物の性能評価試験で行われている載荷速度である。載荷速度を速めた試験結果の比較対象となる試験体である。 これらの実験を実施した結果、全体的な載荷速度の影響の傾向について次の知見を得た。i:降伏耐力や最大耐力は載荷速度の影響が小さい。しかし、最大荷重時変位は小さくなる傾向にある。ii:載荷速度は初期剛性に影響する。iii:破壊性状は載荷速度に影響しない。 今後も関連研究を進め、これらの成果をまとめて発表していく予定である。
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