研究課題/領域番号 |
19K04703
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研究機関 | 国土技術政策総合研究所 |
研究代表者 |
脇山 善夫 国土技術政策総合研究所, 住宅研究部, 室長 (50339800)
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研究分担者 |
清水 斉 広島工業大学, 工学部, 教授 (30709118)
渡壁 守正 広島工業大学, 環境学部, 教授 (40744743)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低層鉄骨造 / 大判ガラス / 地震被害 / 常時微動測定 / 強制加振実験 / 強震観測 |
研究実績の概要 |
近年の地震の際に、震度5強程度の地震から大判ガラスを用いたガラススクリーンの開口部における被害が、構造体に被害の見られない低層鉄骨造建築物を中心に報告されている。ガラススクリーンは道路に面した開口部に設けられることが多く、地震被害によって破損した大判ガラスによる人身への危害という点からも、被害低減のための検討が求められる。本研究課題は、大判ガラスによるガラススクリーンを用いた低層鉄骨造建築物で実際に過去の地震で被害を受けたものを対象に、強震観測等による振動特性の把握、モデル解析等による構造安全性の検討、観測及び解析等を踏まえた総合的な検討を実施して、被害発生プロセスの解明および耐震安全性確保のための設計上の配慮事項について検討することを目的としている。 観測実施の対象となっている低層鉄骨造建築物1棟(平屋建て(一部2階建て)、東日本大震災で大判ガラスに被害)については、近年の地震による大判ガラスを用いたガラススクリーンの被害情報を踏まえて関係者への依頼及び調整を行った。対象建築物について、躯体の各所(1階床、1階梁上、1階柱頭、2階床、2階梁上、大判ガラス近傍の鉄骨上)にセンサーを設置した強震観測の実施を開始するとともに、それに先立って常時微動測定および加振実験を実施(ともにセンサー配置は強震観測同様。大判ガラスの面外方向についても計測を実施。)し、躯体等の振動特性を把握している。また、図面および現地での目視・計測を踏まえたモデルを作成して解析を実施し、強震観測等により把握した躯体等の振動特性との比較を行うことでモデルの改善を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大判ガラスに被害を生じた低層鉄骨造建築物について常時微動測定、加振実験及び強震観測(これまで10の強震記録を得ている)を実施し、対象建築物の振動特性(構造体各方向の固有振動数、減衰、モード特性等)を把握し、地震被害を生じた大判ガラス近傍で応答倍率が増幅される傾向を確認している。モデルを用いた解析は、前述の強震記録等と比較をし、概ね対応することを確認するとともに今後の改善点を把握している。検討対象とする実際に大判ガラスに地震被害を生じた建築物について振動特性を把握するための各種計測記録及び実地震による強震記録を取得し、作成したモデルによる解析の結果と照らし合わせてモデルの改善等を進めていることから、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討では、実際に大判ガラスの地震被害を生じた建築物を対象に、強震観測等及びモデル解析等によって対象建築物の振動特性の把握を進めてきた。今後は強震観測等を踏まえて解析モデルの改善及び地震時挙動の把握を行うとともに図面等を踏まえた構造計算等について検討し、被害発生プロセスの検討及び耐震安全性確保のための設計上の配慮事項に関する検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、対象建築物の選定及び観測機器設置が主要かつ重要な実施内容であり、対象建築物の選定及び観測機器設置に向けた現地打合せに当初想定よりも費用が掛かったこと、また、強震観測を当初想定していてよりも詳細に行うこととしたために費用が掛かったことから令和元年12月に前倒し支払い請求を行ったものの、年度末にむけて、新型コロナ感染拡大防止の影響等により旅費を要する打合せ等が中止になったこと等により次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額については、当初の計画通りに研究を進める上で必要となる直接経費(物品費、旅費、人件費・謝金)として使用する予定である。
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