研究課題/領域番号 |
19K04708
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
河邊 伸二 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20252314)
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研究分担者 |
伊藤 洋介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00757338)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドローン / 打音検査 / へら / 周波数 |
研究実績の概要 |
ドローンは、建設、農業、測量分野と様々な分野で使用され、利用・活用範囲が近年急速に拡大している。建築分野では、施工管理や建物調査・点検に活用され始めている。 現在、建築基準法第12条の定期報告制度により、建築物の所有者等に10年に一度の外壁タイル仕上げの全面打音検査が義務付けられている。打音検査は足場やゴンドラの設置が必要であり、多くの費用や時間が所有者等の負担となる。また、打音検査する職人は専門的な知識と経験が必要である。したがって、外壁タイル仕上げの打音検査には、安価、迅速、正確で、誰でもできることが求められている。ドローンを活用して、外壁タイル仕上げの全面打音検査が可能となれば、多くの費用や時間を省略することができる。 従来、テストハンマーを用いて外壁タイル仕上げの打音検査を行い、周波数1000~2000Hzと4000~5000Hzの平均音圧レベルの差により疑似浮き部の有無を判定した。また、テストハンマーを搭載したホイール付きドローンを用いて同様に周波数2000~3000Hzと4000~5000Hzの平均音圧レベルの差により疑似浮き部の有無を判定した。しかし、ドローンの総重量が200g以上であり、飛行には国土交通省の許可が必要であるため、外壁調査の手軽さに欠けることが挙げられる。 そこで、今回、国土交通省に申請する必要のない200g未満のドローンに打音装置を搭載するため、テストハンマーの代わりに軽量なへらを用いて、2つの周波数スパンの平均音圧レベルの差により疑似浮き部の有無を判定した。 本研究の結果、ステンレス板のへらにおいて、周波数1000~2000Hzと4000~5000Hzの平均音圧レベルの差が、下地厚さに関わらず健全部と疑似浮き部で12dB以上異なるため、下地厚さに関わらず疑似浮き部の有無を判定することができることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響で、屋外での測定が思うように実施でいない。実験室レベルの研究にとどまり、以下の研究を実施している。 材質の異なる5種類のへらで実験を行う。使用するへらの材質の密度、弾性係数、質量を変化させる。へらは、縦25mm×横15mm×厚さ1mmの長方形の板とし、変性ポリエチレンテレフタレート板(以下、PET板)、硬質塩化ビニル板、アルミニウム板、銅板、SUS430板(以下、ステンレス板)の5種類とする。へらは、一端をペンチで掴み固定する。 周波数1000~2000Hzを周波数スパンΔf1[Hz]、周波数4000~5000Hzを周波数スパンΔf2[Hz]とし、Δf1[Hz]の平均音圧レベルL1[dB]と、Δf2[Hz]の平均音圧レベルL2[dB]との差L2-L1[dB]によって健全部と疑似浮き部を判定している。 5種類のへらで疑似浮き部を擦過し、その擦過音を録音する。擦過時に目地部とタイルの境界で音が発生するため、目地を挟むように2枚のタイル面をへらで擦過する。今回は、へらにより発生する擦過音を下地厚さ10mmにおいて、健全部と300mm角の疑似浮き部で比較している。マイクは、対象壁面から150mm離し設置する。録音した擦過音をPCソフトウェアによりFFT(高速フーリエ変換)解析を行う。音圧レベルと周波数の関係により、健全部と疑似浮き部の判定を行っている。 時間分解能は、約5.8ms、周波数分解能は約172Hzである。窓関数はハニング窓とする。また、音圧レベルが最大となる擦過音を選んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
一般にドローンは建築物に衝突しないように、5m程度の一定距離を建築物から離して飛行させる。しかし、オリジナルの二輪型ドローンを使用することにより、建築物の壁面の測定が可能となる。二輪型ドローンは、積極的に建築壁面にドローンを接触させる機体であり、建築壁面に安定した状態で位置を保つことが可能である。この機体は、名古屋工業大学オリジナルであり、本研究にも積極的に活用可能である。二輪型ドローンは、ブレードが8 枚、両側にホイールを2 個有する機体である。マイク内蔵テストハンマーと録画カメラを搭載する。ドローンのペイロード次第で、へらや集音器、アンテナなどの各種測定機器が搭載可能であり、測定の最適解を模索している。 研究期間内において、最先端の科学研究に対応すべく新規測定機器を作製し、実験と測定を通して、応用範囲の拡大を目指す。ドローン活用のための研究の結果、建築分野におけるドローンの安全な利用・活用を図る。 コロナ禍のため、屋外の実験が思うように実行できず、研究の方向性において微修正の必要を有し、最善の検討をしながら対処している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、屋外の測定が十分に実行できなかったため。 コロナの状況を見ながら、迅速に実験を進める。
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