研究課題
建築物の外壁タイル張り仕上げの調査において全面打診をする際,仮設足場の設置が建築物所有者等の負担となる。負担軽減のため,ドローンによる赤外線調査が行われている。しかし,ドローンによる赤外線調査では,気象条件や建物条件,周辺環境,撮影条件等の適用条件を満たさない場合,タイルの剥離診断は難しい。気象条件等の影響を受けにくいタイルの剥離診断方法として,タイル用テストハンマーを搭載した壁面接触型ドローンによる打音をFFT分析した。浮き部は,周波数スペクトルに複数のピーク周波数が現れることがわかった。しかし,FFT分析は打音の時刻歴波形を周波数スペクトルに変換するため,時間的な打音の特徴が失われ,打音の減衰を考慮した剥離診断ができない。先端が球のタイル用テストハンマーを壁面に押付けながら移動(以下,擦過とする)するとき,タイル目地の凹部で生じた段差によりテストハンマーが反発することで複数回打撃され,打撃位置の特定が困難である。そこで本研究では,タイル用テストハンマーより軽量で,タイル目地の凹部で生じた段差により反発しにくいへらをドローンに搭載してタイル壁面を擦過し,プロペラ音を含む打音の時刻歴波形をウェーブレット変換して,スカログラムで表示した。スカログラムはプロペラ音を含む打音の音圧と時刻成分だけでなく,周波数成分を表示できる。スカログラムを用いれば周波数成分により打音とプロペラ音を分離し,打音のみの音圧と減衰特性を用いてタイルの剥離診断ができると考え,その方法について検討した。
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日本建築学会構造系論文集
巻: Vol. 89, No. 817 ページ: 247-255
10.3130/aijs.89.247