2021年度は、陸屋根建築物における軒先に形成される雪庇の風速依存性を明らかにすることを目的に、自然雪を用いた吹雪風洞実験を行った。風速2.5m/sから7.0m/sの雪庇形成状況を実験的に再現し、軒先の風速と軒部の積雪率との関係を分析した。その結果、風速3.0m以上5.0m/s未満で雪庇が形成され、風速の増加に伴い雪庇の厚さが薄くなる傾向を示した。また、風速5.0m/s以上になると軒部の積雪が吹き払われ、雪庇が形成されなかった。このような吹雪風洞実験の結果に基づいて軒先の風速と軒部の積雪率との関係を表す回帰式を構築した。 次に、北海道科学大学8号館を対象に、雪庇の屋外観測を行った。北海道科学大学8号館は、2階建ての西棟と3階建ての東棟で構成され、それぞれの屋上に風向風速計を設置して風向風速を連続的に測定した。さらに、2階建ての西棟における雪庇の形成状況を地上から監視カメラを用いて観測した。また、月に2回程度の頻度で小型UAVによる空撮を行い、写真測量に基づいて屋根上積雪分布を測定した。風向風速の観測結果をみると、3階建ての東棟の風向は西北西から北西であり、最寄りの気象観測地点と近似するものの、2階建ての西棟においては周囲の建物が影響して南寄りの異なる風向となった。このような風向が影響して2階建て西棟の風速は3階建て東棟に比べて小さく、二階建て西棟の軒先では雪庇が大きく発達した。ここで、吹雪風洞実験で得られた軒先の風速と積雪率との関係と照らし合わせると、風速が5.0m/s未満で積雪率が大きくなる関係が屋外観測の結果と対応している。 以上に示すように、吹雪風洞実験で得られた雪庇の風速依存性が屋外観測においても確認され、屋根面の風速に基づいて雪庇の形成状況を推定できる可能性があることが明らかとなった。
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